松井 雄一

高速道路の料金割引における時間帯別交通量推計とその影響評価

松本 昌二,佐野 可寸志


 新潟都市圏では,朝夕の通勤時には信濃川や阿賀野川にかかる橋梁部で慢性的な交通渋滞が発生し,特に一般国道7号「新新バイパス」の阿賀野川橋梁部において深刻な状態となっている.高速道路(日東道)に転換させて,新新バイパスの渋滞緩和を目指して,平成15年度,16年度に高速料金割引の社会実験が行われた.これは新しい道路行政の一つの方向である「つくる」から「使う」への転換という施策でもある.

 そこで本研究では,時間帯別均衡配分を行い現況再現,平成15年度及び平成16年度秋季の両社会実験の再現を行い,それを踏まえて平成16年度冬季の社会実験の需要予測を行うと共に,経済性および採算性の面から最適な料金割引率を推定することを目的とする.

 第3回新潟都市圏パーソントリップ調査のデータを使用して時間帯別車種別OD表を作成した.対象エリアは,新潟都市圏の6市12町8村としている.時間帯は,PT調査のトリップ数の時間帯分布より,朝ピーク時(7-9時),オフピーク時(12-14時)および夕方ピーク時(17-19時)の3時間帯とした.車種分類は,高速料金および交通特性の異なる,軽乗用車,普通乗用車,小型貨物車及び大型貨物車の4車種としている.感度分析での評価項目は,走行台キロ,走行台時間および環境への影響としてNox排出量,CO2排出量,また採算性の面から高速料金収入の5項目とした.

 現況交通の再現精度は,各時間帯ともに相関係数0.94を上回る結果となった.平成16年度冬季の社会実験の需要予測としては,割引対象区間全体で朝ピーク時2.9倍,オフピーク時3.5倍および夕方ピーク時3.3倍という結果となった.割引率の増加に伴い,高速道路に交通がシフトし高速道路の台キロ,台時間および排出量が増加する.一方,新新バイパスは,高速道路にシフトする事により,台キロ,台時間および排出量が減少していく.高速道路と新新バイパス合計の台キロ,台時間および排出量は,割引率の増加と共に増加傾向にある.これは,県道・市道等のからの新新バイパスへのシフトがあり,高速及び新新バイパス合計での交通量の増加によるものである.全路線網では,割引率の増加に伴い高速道路の利用の増加によりトリップ長が長くなる結果となり,台キロおよび排出量共に増加傾向にあり,逆に台時間は減少傾向にある.経済的便益の面から考えると,高速料金は料金割引率75%が最も便益最大となり,採算性の面から考えると料金割引率50%の料金収入が最大になる結果となった.有料道路制度を前提とするならば,割引率50%が最も望ましいといえる.