砂川 鉄雄

パルス通電加熱法によるシリカガラスの作製と評価

松下 和正

本研究ではパルス通電加熱法を用いてquartz、CVDシリカガラス、sol-gelシリカガラスの粉末からシリカガラスを作製した。
作製したシリカガラスは50K/min以下の昇温速度で完全にガラス化し、透明なバルクが得られた。粉末X線回折分析により未溶融の結晶を含まない事が確認された。
作製したガラスに対し可視紫外吸収吸光分析を行なった。全てのガラスは可視域では透明であり、紫外域に吸収端が確認された。吸収端の位置は金属不純物の濃度が高いほど長波長側にシフトした。原料にquartzを用いた試料では250nm付近に吸収のピークが現れた。
作製したガラスに対し蛍光分光分析を行なった。原料がQuartzの試料では290nm、370nm付近に大きな蛍光ピーク、原料がCVDシリカガラスの試料では280nm付近に極小さな蛍光ピーク、原料がSol-gelシリカガラスの試料では370nm付近に小さな蛍光ピークが確認された。
蛍光強度は原料中のOH濃度に強く依存する事が示唆された。原料がquartzの場合二山の蛍光ピークが現れたが、これは励起状態での準位が複数あることに起因すると考えられる。蛍光ピークの位置や数は原料ごとに異なったが、金属不純物濃度やOH濃度とは相関は見られず、ネットワーク構造など他の機制により、歴状態での準位間の遷移に違いが生じるためだと考えられる。CVDシリカガラス粉末を原料にパルス通電加熱法によりバルク化したガラスと元のCVDシリカガラスに蛍光強度の変化は殆ど見られなかった。これよりパルス通電加熱法ではガラスにおいても原料粉末の特性を保ったままバルクガラス化が可能なことが確認された。