三上純

焼却灰再生製品の重金属溶出特性の明確化と焼却灰資源化物の最適な有効利用方法の選定

小松俊哉,藤田昌一,姫野修司

現在、循環型社会への転換を担う技術として焼却灰資源化技術の普及が進みつつある。これらの技術で製造された資源化物は、原姿のまま路盤材などに利用する一次資材分野、コンクリート製品などに成型して利用する二次資材分野で再生製品として有効利用が試みられている。しかし、再生製品からの重金属溶出に伴う環境汚染が懸念され、有効利用は十分でない。現在の再生製品に対する環境安全性管理は、両資材ともに環境庁告示46号法溶出試験(以下、46号法)を用いて、土壌環境基準値で判定されている。しかし、46号法は、蒸留水を溶媒として使用するため、再生製品中のアルカリ成分溶出に伴い溶出液pHが上昇し、陽性元素の溶出性を過小評価することや、試料を粉砕して試験に用いるため二次資材では利用時の形状と異なる形状で溶出影響を評価しており、適切な溶出影響の把握が行われていない可能性がある。そこで本研究では、再生製品に対して46号法、46号法とほぼ同じ条件で酸性雨の影響を考慮し、pHを4に固定して試験するpH4固定法試験、試料を塊状のまま試験に用いる拡散溶出試験を実施し、溶媒や試料の形状による溶出影響について検討を行った。さらに、再生製品の環境安全性を適切に管理するため、資源化物の有害レベルに応じて適した利用方法を選定する手法を提案した。
まず、46号法では全ての再生製品が土壌環境基準値を満足しており、再利用が可能と判断されているものと考えられた。しかし、pH4固定法試験では46号法を大きく上回る溶出影響が確認され、再生製品が酸性条件下で利用された場合、より多くの溶出を生じる可能性が示唆された。このため、酸性条件の溶出試験で安全性を確認することも必要と考えられた。さらに、二次資材では、拡散溶出試験により成型体内部から表面への物質の移動速度を数式化し、長期的な溶出影響の予測を行い、46号法での溶出影響と比較した。その結果、両溶出試験で溶出影響が逆転する場合が多数確認され、46号法で基準を満たした試料も、長期的には多大な環境負荷を与える可能性が示唆された。このため、二次資材では利用時の形状を反映した拡散溶出試験で溶出影響を把握していく必要があると考えられた。
また、これまでの再生製品に対する環境安全性管理は、再生製品が土壌に還元されても安全上に支障がないよう、土壌の環境安全性管理を判断の目安としてきた。近年、土壌の環境安全性管理では、新たに摂食に関わるリスクを想定するなど、有害物質の曝露経路に応じ安全性を評価する動きがあり、再生製品も、再生製品の利用に伴い対象となるリスクを特定し、安全性評価を行っていく必要があると考えられた。そこで、利用形状を考え土壌と同様の対象リスクを持つと考えられた一次資材について、摂食、溶出に関わるリスクを要件として利用判定を行った。その結果、20種類の資源化物のうち、11種類の資源化物が一次資材として必要な環境安全性を保持していないことが明らかとなった。しかし、資源の有効利用の観点からは、単独では有害レベルが高いとされた資源化物も、安全性が確保できる用途で利用していくことが望まれる。そのため、二次資材の原料として利用していくことが有効と考えられた。このように資源化物の有害レベルに応じ、適した利用方法を選定することで、再生製品の環境安全性を適切に保ちつつ、有効利用を促進していくことが可能と考えられる。今後は、二次資材として再利用された際の溶出影響を適切に評価するため、拡散溶出試験を用いた環境安全性管理手法を構築していく必要がある。