田村 佳之
一槽間欠曝気式膜分離活性汚泥法における担体投入効果
小松俊哉、藤田昌一、姫野修司
膜分離活性汚泥法は閉鎖性水域における富栄養化の一因である窒素の除去が可能な高効率処理法であり、本研究室において一槽間欠曝気式リアクターを用いて高い窒素除去率を得ているが、大都市においては流入水量が大きいためHRTが6時間未満で運転されており、膜分離法の適用においてもHRTを短縮する必要がある。この場合、処理水質と水量を維持するために、担体を反応槽内に投入することが有効となる可能性がある。そこで本研究では、有機物除去性能、窒素除去性能、膜透過性能に着目し、担体を投入する系としない系において、基質にコーンスティープリカー(CSL)を用いて、HRTを6時間と4時間の2種類設定し、4系列の連続実験(50日間)、また担体を投入する系としない系において、実下水を用いてHRTを6時間に設定し、2系列の連続運転(15日間)を行い、担体投入効果を検討した。投入担体については予備実験の結果から、(株)西原環境テクノロジーのリンポーキューブを用いることとした。CSLを用いた連続運転では高MLSS条件で行った。CSLはTOC濃度:250 mg/L、TN濃度:65 mg/Lに調整した。運転期間中は1日1回スポンジ洗浄を行い、さらに操作圧力を調整して所定のFLUXを得るようにした。
本研究の結果、以下のことが明らかになり、担体投入を行う本プロセスの有効性が示された。
1.有機物除去能
いずれも担体を投入した反応槽が、担体を投入しない反応槽に比べ、TOC除去率が高かった。CSLを用いた系において、HRT4hで運転したTOC除去率が92%以上であるため、HRTを短縮してもTOC除去率が大きく低下しないことが確認された。実下水の系ではTOC除去率は低かったが、運転期間の増加にともない、TOC除去率が上昇する傾向がみられた。
2.窒素除去能
いずれも担体を投入した反応槽が、担体を投入しない反応槽に比べ高いTN除去率を示した。HRT4hで運転した担体投入系のTN除去率が70%以上達成していることから、担体投入することにより、HRTを短縮した場合にもTN除去率の大幅な低下を防げる可能性が示された。一方実下水の系では、TN除去率が低かった。この原因として、水温が低いことにより生物活性が抑制されたこと、担体の馴養(通常2〜3ヶ月必要)が不十分であることより、硝化脱窒反応が十分に進行しなかったことなど考えられる。
3.膜透過性能
いずれも担体を投入した反応槽が、担体を投入しない反応槽に比べ、FLUXが高い一方膜間差圧の上昇はゆるやかで、膜透過性能の保持に有利であった。担体を投入した反応槽は、担体の膜面付着物剥離効果により、膜面付着物量が少ないことが確認された。実下水においても、担体を投入した系は、膜透過性能の保持に有利であった。膜間差圧は、実下水の系がCSLの系よりも大きく上昇した。この原因として、冬季の運転であるため、水温が低く反応槽内の粘性が高くなっていることなどが考えられる。