蛭子井 康

嫌気性アンモニア酸化(ANAMMOX)反応系における微生物群集構造

原田 秀樹

新規な生物学的窒素除去反応として、嫌気性アンモニア酸化反応 (Anaerobic Ammonium Oxidation [ANAMMOX]) が注目され始めている。ANAMMOX反応とは嫌気的条件下で、アンモニアを電子供与体、亜硝酸を電子受容体として窒素ガスへ変換する反応である。このANAMMOX反応は有機物を全く必要としない独立栄養反応であるため、従来の好気処理で行われてきた硝化・脱窒法と比較して省エネルギーかつ低コストで窒素を除去することが可能である。しかしながら、ANAMMOX反応を担う微生物の増殖は極めて遅いことから (倍加時間は約11日)、いかにANAMMOX反応を担う微生物を反応槽内に高濃度に保持できるかがプロセス成功の鍵を握っている。そこで、栗田工業鰍ヘいくつかの検討をおこなった結果、メタン発酵処理で用いられている嫌気グラニュール汚泥を核として使用することでANAMMOX微生物を高濃度に保持することに成功し、窒素除去にも優れた上向流リアクターを開発することに成功した 。 そこで本研究では、この良好な処理能を有するANAMMOXグラニュール汚泥の基礎的な情報を得ることを目的として、16S rRNA遺伝子に基づいたクローン解析による微生物構造解析とFISH (Fluorescence in situ hybridization) 法を用いたANAMMOX細菌のグラニュール汚泥内の空間的な位置の解明そして培養による集積および分離を試みた。16S rRNA遺伝子クローン解析の結果、既報のANAMMOX細菌と極めて近縁なクローン配列が得られた一方で、機能も全く不明な未分離の細菌グループに属しているクローン配列も多く検出された。さらにFISH法を用いることでPlanctomucetales門に属する細菌がグラニュール汚泥表面を覆うように存在していることが明らかとなり、本ANAMMOXグラニュール汚泥においてもPlanctomycetales門に属する細菌が主にANAMMOX反応を担っていることが強く示唆された。 また、ANAMMOXグラニュール汚泥からサンプルを採取し、培養を行ったところ、アンモニアと亜硝酸の減少が確認されたことから、ANAMMOX反応が起きていることが確認された。