高橋 俊之
酵母 Cryptococcus humicola UJ1 の D-アスパラギン酸酸化酵素遺伝子の異種細胞における発現と諸性質の解析
山田 良平、解良 芳夫、高橋 祥司
D-アスパラギン酸酸化酵素 (DDO) は酸性 D-アミノ酸の酸化的脱アミノ反応を触媒するフラビン酵素である。当研究室では、酵母Cryptococcus humicola UJ1から本酵素 (ChDDO) を精製し、その酵素的諸特性を明らかにしてきたが、本酵素の大量発現系が構築されていなかったために精製が容易でなく、構造面に関する研究が困難であった。本研究では ChDDO遺伝子の大腸菌での大量発現系と、タグ融合組換え蛋白質による簡便な精製系の構築を検討した。また、組換え ChDDO の諸特性の解析を行い、酵母由来の本酵素と比較した。本酵素の cDNA を単離して発現ベクターを構築した。インテインタグと His タグをそれぞれ N 末端に融合させ 2 種類を検討した。インテインタグ融合 ChDDO の大量発現がみられたが、その多くが封入体を形成していた。His タグでは無細胞抽出液にわずかながら活性が存在したが、精製に用いるには到底足りなかった。このためタグ融合蛋白質の検討を一旦中止し、タグを付けずに組換え ChDDO の発現と精製を行った。培地、培養温度、IPTG濃度及び誘導時間の最適化を行った。その条件を用い精製を行った結果、湿重量 14.1 g の菌体から比活性 123 U/mg の単一精製酵素が 1.32 mg 得られた。また酵母から精製した場合より精製過程を1段階減らすことに成功し、かつ湿重量当たり4倍の精製酵素を得ることができた。精製した組換えChDDOは、至適温度が 37℃、至適pHが 7.5 であり、D-Aspに対して非常に高い基質特異性を示した。競合阻害剤としてはマロン酸が最も強く働き、可視吸収スペクトルは FAD 酵素特有の形状を示した。これらはいずれも、酵母からのChDDOの諸特性と一致した。