森 一弘
デジタル航空写真上の樹木自動認識手法の研究
力丸 厚 向井幸男
本研究はデジタル航空写真上での樹木分布の自動認識手法の開発を目的としている。背景として、地球規模での森林減少が一因とされる地球温暖化は近年深刻な状況にあり、温室効果ガスの吸収源である森林資源の保護対策に早急に取り組む必要がある。森林資源量の変化を把握する手法として、広範囲での情報収集に有効なリモートセンシング技術が注目されている。本研究は、樹木認識を「樹木の位置と本数の把握」と定義して、高解像度リモートセンシングデータのデジタル航空写真を使用し、テンプレートマッチングを解析手法とする樹木の自動認識を試みた。
テストエリアは小千谷市内のスギ林で、樹冠直径のほぼ均一なスギが分布している箇所と、樹冠直径の疎らなスギが分布している箇所を使用した。
テストエリアより単体の樹木領域を切り出した画像をテンプレートとした解析の結果、スギの存在する箇所において相関が高くなる傾向を得た。よって、切り出した画像をテンプレートとしたテンプレートマッチングが樹木の認識に利用できる可能性が示された。一方、樹冠直径が大小異なる2つのサンプルを切り出し、各テンプレートを用いた解析を実施した。結果は、テンプレートの樹冠直径よりも小さな樹冠では、マッチングの相関が低くなる結果を得た。よって、テンプレートの大きさを変えて解析することで、樹冠の大きさ別に認識を行えると考えられる。
一方、主観的要因を低減したテンプレート生成の検討として、複数箇所で切り出した画像を平均した画像をテンプレートとした解析の結果、切り出したテンプレートを用いた場合には相関が低くなる箇所が、平均化画像を用いた場合に相関が高くなることが確認された。このことから、平均化画像は客観性の高いテンプレート画像として用いることが可能といえる。
さらに、平均化するための画像を、相関の高い箇所から自動で抽出する手法を用いた解析の結果、目視で樹木を任視した結果に比べて認識率70.1%となり、精度の高い結果が得られた。このことから切り出した1箇所のテンプレート画像からの解析で、認識精度を上げることが可能となった。
より客観的なテンプレート作成手法の検討として、コンピュータグラフィックスによる樹木の簡易モデルからテンプレートを作成し、解析した結果、スギの存在する箇所において相関が高くなる傾向を得た。よって樹木の認識が可能であることが確認された。しかし、樹木モデルのパラメータを詳細に設定する必要がある。
以上より、リモートセンシングデータを用いた樹木の自動認識手法によって対象領域内のスギの位置と本数の推定が可能であることが示された。