中西芳彦
衛星画像を用いたメコン河流域の土地被覆分布情報復元に関する研究
向井幸男 力丸 厚 高橋一義
今日、世界の人口総数は60億人を超え、将来の食糧事情が懸念される。メコン河流域は世界有数の米の産地であり、特に下流域のメコンデルタでは天水による広大な水田作付け地帯が広がっており、メコン河流域での米生産は将来、食糧問題の緩和を見込める地域と言われている。しかし、メコン河流域の水文環境は、季節変動・年次変動が大きく、洪水、干ばつ等が頻繁に起こる地域である。今後の安定した土地利用、水資源利用のためには長期にわたる土地被覆・土地利用分布情報の把握およびその変動を把握することが重要である。
本研究では、2000年を対象時期として各衛星データの特性、陸域と水域、雨季と乾季を考慮し、メコン河流域の農地を中心とした土地利用、土地被覆情報の復元、把握手法を開発した。陸域では、LANDSAT TM・ETM+・MSSデータを用い複数時期の土地被覆を考慮し局所域における土地利用図を作成した。また、広範囲・高頻度観測可能なEOS-TERRA MODISのSurface Reflectanceデータを雨季前半・後半、乾季前半・後半の季節毎にデータを合成し、雲域等のデータ欠損を補った後に植生被覆密度から農地を類型した土地利用図を作成した。水域においては、全天候観測可能なRADARSATデータを用いて湛水域を抽出した。植生影響によりRADARSATデータで湛水域を陸域と誤判別する地域については、EOS-TERRA MODISのLand Surface Temperature/Emissivityデータセットを用いて湛水植生域を抽出した。更に、同データを多時期合成し、欠損箇所を補い、メコン河流域の湛水・湿潤域を広域把握した。ここで、湛水・湿潤域の閾値は、昼夜の温度差を考慮し求めた。作成した土地利用図の検証のため、メコン河流域に位置するカンボジアのカンダルスウン地方とバッタンバン周辺で現地調査を実施した。調査を行った結果、カンダルスウン地方における土地利用図と調査点での土地利用状況は合致していたことが確認できた。バッタンバン周辺の調査点では一部の地域を除き合致していたことが確認できた。
本研究で作成した土地利用図より、季節別の湛水域の情報、陸域における農地の分布状況を把握することができた。更に農地を類型したことにより、播種、刈り取り時期を推定することができ、農作物の安定供給を行う上で、有益な情報になると考えられる。