清水 智

積雪のある陸面パラメータの導出とそれが大気に与える影響に関する研究

早川 典生


 融雪後、長期にわたって河川流出量に影響を与える積雪水量としての積雪量の監視は、水資源管理を考える上で非常に重要である。レーダや可視・マイクロ波センサを用いたリモートセンシングによって積雪域の特定は行われているが十分な精度での積雪深の導出は現在はまだ困難である。また、数値シミュレーションを用いた積雪量の正確な推定が行われた実例もない。そこで本研究では観測が困難な積雪時における陸面パラメータを簡易的に作成し、それを用いて数値シミュレーションを行い、地表面パラメータを一定値で与えたものと、作成した現実に近い地表面パラメータを与えたものを相互に比較することにより、数値シミュレーションにおける陸面の影響を考察した。数値実験対象期間として海岸沿いの平野部に雪が観測される里雪型を含む時期である2001年1月26日00Zから29日00Zまでとし、水平格子間隔を5km、鉛直層38層で実験を行った。NCEPによるGADSの解析データを用いて、気温、風速、湿度、気圧に相当する力学量を初期値、側面境界値とした。地表面境界条件としてはUSGS土地被覆データと衛星データによる雪被覆状態を基に地表面粗度とアルベドの被覆分類値を各モデル格子内で領域平均をし、現実に近い地表面粗度とアルベドを導出して使用した。地表面粗度が大きいと地表面近傍に冷たい空気が溜まり、海上へと流れ、収束する。能登半島東側から上越沖にかけての海面上での風の収束の強さは、強くなる傾向がみられた。また、アルベドを現実に近い水平分布で固定し、地表面粗度を現実に近いパラメータの範囲内で森林の粗度を1mとしたものと0.5mとしたものとの比較した。地表面粗度の小さいものでは比較的暖かい空気が海面上へと流れるという異なる過程で収束した。海面上での収束の強さは、大きいほうの1.36倍となった。これは粗度を4mとした実験と比較し、同海域での収束量に与える影響がほぼ同じであった。