小池 公紀

分割練混ぜがモルタルの流動特性に及ぼす影響

指導教官 丸山 久一


流動特性に対する分割練混ぜの効果を明確にすることを目的として,使用材料,配合を変化させた各種モルタルの流動特性に及ぼす1次水量の影響を検討した。

1次水セメント比を変化させて普通コンクリートを想定したモルタル(プレーンモルタル,AE減水モルタル,SP減水モルタル)と自己充填コンクリートを想定したモルタル(自己充填モルタル)を調製し,練上がり5,35,65分後にフロー試験を行った。その結果,普通コンクリートを想定したモルタルの場合,1次水量の相違はモルタルの初期流動特性および流動特性の経時変化に影響を及ぼさないことが明らかとなった。これに対し,自己充填コンクリートを想定したモルタルでは,練混ぜトルクが十分大きくなる1次水セメント比24%のときと,逆に練混ぜトルクが小さくなる1次水セメント比3%のときに練上がり直後のフロー値が増大することが明らかとなった。また,1次水セメント比3%ではフロー値の経時変化が大きくなることが明らかとなった。

自己充填コンクリートを想定したモルタルで,水和反応と練混ぜトルクが流動特性に及ぼす影響を検討した。水和反応の影響を調べるために,石灰石微粉末を用いたモルタルで1次水セメント比を変化させ練上がり5分後にフロー試験を行った。その結果,セメントを用いた場合に生じるフロー値の増加はセメントの水和反応が影響していることが明らかとなった。練混ぜトルクの影響を調べるために,石灰石微粉末を用いたモルタルとセメントを用いたモルタルで1次練混ぜ時間を延長して練上がり5分後にフロー試験を行った。その結果,石灰石モルタルでは1次水セメント比が24%のとき,自己充填モルタルでは1次水セメント比が12%と24%のときに1次練混ぜ時間の延長に伴いフロー値が低下した。

自己充填コンクリートを想定したモルタルで,1次水量が高性能AE減水剤の粒子分散作用に及ぼす影響を検討した。高性能AE減水剤添加率を変化させ練上がり5分後にフロー試験を行った。その結果,1次水セメント比が3%の場合は,練上がり直後にセメントの初期水和および液相中のイオン濃度の影響が抑制され,高性能AE減水剤の粒子分散作用が十分に発揮されている状態にあることが明らかとなった。1次水セメント比を24%とした場合,12%と比較すると,液相中のイオン濃度が高性能AE減水剤の粒子分散作用に及ぼす影響をより抑制している状態にあることが明らかとなった。 1次練混ぜ時間を延長すると,1次水セメント比が12%の場合はセメント粒子表面の状態変化が,24%の場合は液相中のイオン濃度の影響が高性能AE減水剤の粒子分散作用を低下させていることが明らかとなった。