加勢貴志
粉状産業廃棄物を混入させたコンクリートに関する研究
指導教官 : 丸山久一
最終処分場は逼迫した状況にあり,廃棄物問題は深刻な社会問題となっている.
そこで本研究では還元スラグ,鋳物灰,下水汚泥焼却灰(以下:焼却灰)の三種類の廃棄物を混合させたコンクリートを無筋コンクリート構造物として再利用することを目的とし配合,施工性および強度について検討をおこなった.対象とする構造物は強度や耐久性がそれほど高くない消波ブロックとした.消波ブロックの要求性能はスランプ5cm程度,圧縮強度22N/mm2である.
本研究で対象としているコンクリートは粉体量が非常に多く,通常の配合方法で配合することが困難であるため,桜井らが提案した配合方法を適用した.桜井らが提案した配合方法はいくつかの仮定の上で成り立っており,本研究ではその仮定が成り立つ範囲内で還元スラグ鋳物灰を300〜500kg/m3,焼却灰を100〜300kg/m3と変化させ,その強度特性について検討を行った.
また,桜井らの報告によるとNaClの添加による強度増進効果が確認されている.本研究においてもNaClの添加による強度増進およびその影響を把握することを目的として,廃棄物を混入させたコンクリートに対して検討を行った.
その結果,全ての配合においてNaClの添加による強度が増加することが確認されたが,目標強度を達成することは出来なかった.しかし,養生中の水分・材齢を確保することにより,十分な強度を得ることができた.
本研究では施工性の面において,目標スランプを5cmと設定してきたが,廃棄物を混入させたコンクリートは非常に粘性が高く,例えスランプが5cmであったとしてもその施工性は必ずしも良いものではない.そのため,高性能AE減水剤を添加することで目標スランプを10cmとし, 施工性の向上を図った.
また,桜井らが提案した配合方法は,コンクリートに所定の施工性を持たせるために単位水量が過剰となり,その強度を著しく低下させる.そこでW/Cを比較的低くし,一定とした場合の施工性および強度特性について検討を行った.
その結果,施工性を確保するために廃棄物混入量は制限されるが,廃棄物混入量の増加と伴に圧縮強度が増加することが明らかとなった.