岡崎　雅弘

内部鉄筋の腐食形態が鉄筋コンクリート部材の力学特性に及ぼす影響

指導教官　下村　匠　

鋼材の腐食量とコンクリートの腐食ひび割れ幅を関係づける既往の計算モデルの多くは，鉄筋
の腐食，かぶりコンクリートの腐食ひび割れともに，現象を部材軸方向に一様と仮定している．
しかし，実際は鉄筋の腐食量，コンクリートの腐食ひび割れ幅は部材軸方向に一様ではない．簡
便な計算モデルを用いる場合であってもその前提と適用限界を正しく把握しておくことは重要
である。そこで本研究では，腐食量，腐食ひび割れ幅について特に部材軸方向の分布の観点から
検討した．
腐食量，腐食ひび割れ幅の軸方向非一様性の傾向について，過去に本研究室で行われた電食実
験結果を用いて検討した.その後, 腐食量と腐食ひび割れ幅に関する簡単な二次元剛体モデルを
用いて，腐食量，腐食ひび割れ幅の軸方向非一様性が腐食量とひび割れ幅の関係に及ぼす影響を
確認した．その結果，以下のことが分かった．
1.電食により鉄筋を腐食させた供試体は，腐食量，腐食ひび割れ幅の両方で軸方向で一様では
ないことが確認され，非一様性の程度は腐食レベルに関わらず一定となった．また，腐食ひ
び割れ幅は変形，破壊の三次元効果を受けるため，腐食量以上に軸方向の非一様性が大きく
なった．
2.電食試験における鉄筋コンクリート中の鉄筋の腐食の非一様性は，コンクリートの影響を受
けない．また，腐食ひび割れの軸方向の非一様性にはスターラップの有無および間隔の影響
を受けない．
3.腐食ひび割れ幅が0〜2mmの範囲では,実際の腐食ひび割れ幅は，二次元剛体モデルを用いて
予測される値より小さい．
腐食量，腐食ひび割れ幅の軸方向非一様性が鉄筋コンクリート部材の力学特性に及ぼす影響を
検討するため，腐食ひび割れの有無，腐食区間長，腐食区間の平均腐食量が異なる鉄筋コンクリ
ート供試体と腐食区間長，腐食区間の平均腐食量が異なる鉄筋の一軸引張試験を行った．鉄筋の
降伏強度，断面剛性コンクリートの平均応力−平均ひずみ関係を求め，それらに及ぼす腐食量の
軸方向非一様性の影響を検討した．その結果,以下のことが確認された．
1.腐食させた鉄筋の降伏荷重は腐食区間の平均腐食量，断面剛性は腐食量の分布で決まる．
2.コンクリートの引張剛性は，腐食ひび割れにより低下する．また，腐食区間の平均腐食量が
大きいほど,腐食区間長が長いほど低下する．