合成2主桁斜張橋の終局挙動,強度特性の解明

廣野智紀

指導教官 長井正嗣 岩崎英治


 圧縮に強いコンクリート床版と変形性能に優れる鋼I桁を合成させた断面を主桁に持つ合成斜張橋は,経済的であるとされ海外で注目され,建設数も増加する傾向にある.しかし我が国では技術的課題が明確にされていないこともあって,建設実績がない状況にある.主な技術的課題として,終局挙動,強度特性の把握と座屈設計法の確立,クリープ・乾燥収縮によるの応力移行量の把握,耐風安定性の確保,ケーブル定着部や床組構造の設計法の確立,等が挙げられる.本研究では,これらの技術的課題の一つである終局挙動,強度特性に着目し,これらを明らかにするとともに,主桁の座屈設計法を提案することを目的とする.
本研究では3つの異なるスパンを有する合成斜張橋のモデルを検討対象する.モデルは支間150m,400mおよび600mモデルで耐荷力解析を行う.パラメータとして,支間150m,400mモデルでは,桁高として1.0,1.5, 2.0mを考える.また,支間600mモデルでは桁高を1.5,2.0,2.5mとする.荷重の載荷方法は,完成状態からクリープ・乾燥収縮を考慮して,1000日後の状態に活荷重を載荷したうえで,更に死活荷重を斬増させる.このような条件で,終局挙動,強度特性について検討を行う.
モデルごとに桁高に応じて得られた荷重倍率の値を以下に示す.
支間150mでは,桁高1.0,1.5,2.0mの順に2.04,1.80,1.62.
支間400mでは,桁高1.0,1.5,2.0mの順に2.37,2.40,2.30.
支間600mでは,桁高1.5,2.0,2.5mの順に1.95,1.94,1.93.
終局挙動は,初期降伏応力が生じた位置で降伏域が桁の全断面に広がり,桁が折れ曲がるようにして終局に至る.構造的に塔位置の桁に応力が集中するため弱点と考えられるが,本研究では全てのモデルにこのような考えが当てはまらなかった.

 今回扱った支間および鋼桁パラメータの範囲において,終局挙動は桁の全体座屈ではなく鋼桁の降伏強度に支配され,材料の降伏とほぼ同時に終局状態となる.このことから,鋼板の局部座屈の照査を行えばよく,また終局強度に対する荷重倍率は鋼桁の降伏点と作用最大応力の比から定義できる.