五十嵐 健

アンダーピニングに用いられた場所打ち杭の沈下特性の研究

海野 隆哉

アンダーピニングとは在来基礎に対して影響を与えない位置に新しい基礎を設け、この基礎上に既設構造物の柱を抱えこんだ添えばりを設け荷重を受けかえるものである。
研究目的は高架橋をアンダーピニングする際に用いられた仮受け杭の計測データを基に、場所打ち杭の沈下特性を明確にすることである。
京都市営地下鉄を京都駅の下に建設するために、新幹線高架橋をアンダーピニングにて施工した。アンダーピニングの際に高架橋が沈下するのを防止する為仮受け杭にプレロードをかけた。仮受けばりと仮受け杭56本全ての杭頭との相対変位量を測定し、その値から仮受けばりのたわみ量および高架橋の変位量を差し引いたものを杭の沈下量とした。
この沈下量をもとに荷重−沈下量関係をグラフに表した。沈下量に関して不連続データ、不規則データ、そして異常値データをもつ杭を除き、残った杭の荷重−沈下量関係を半対数グラフにした。それに回帰曲線を加えて表した。同様に荷重−相対変位量関係についても半対数グラフに表した。回帰曲線はy=aXbの形で記載されているが、yは沈下量δまたは相対変位量δ0を表し、Xは荷重Pを表す。
回帰曲線(y=aXb)の係数aと指数bの関係をグラフにまとめた。そしてそこに近似式を書き加えた。近似式はA、B、C、E、F、G列とD列の二つに分けて加えた。これはプレロード最大荷重を考慮してそのように考えたからである。
そして、対数近似式の係数aと切片bをもとに、荷重−沈下量が累乗近似曲線の指数bにより沈下量δが求まる提案式を求めた。提案式より求めた値を推定値とし実測値と比較し、提案式の検定を行った。
今回の解析は困難なものであった。そのため、沈下の性状をうまくまとめられなかった。A〜G列に対してそれぞれ異なったプレロード荷重が設定されているため、各杭列毎に荷重レベルに差があり、全体を一様に比較することができなかった。また、場所打ち杭におけるバラツキの特性が現れていると考えられる。
杭頭荷重Pから仮受け杭の沈下量δ、仮受け杭と仮受け梁の間の相対変位量δ0を推定する近似式を提案した。この提案式は、場所打ち杭のばらつきの特性のため、係数bは杭毎に推定する必要があり、しかも計算結果はかなりの誤差を含む結果となった。しかし、推定値の総平均値は偏りがなく、第1近似値の推定には使えるものと考えられる。