西 紀行

気泡混合軽量土の噴泥に関する研究

海野 隆哉

現在、鉄道の盛土材として使用されている気泡混合軽量土は、設計強度を1500kPaに設定したものである。本研究室では、今後更なる軽量化をはかるにあたり設計強度を1000kPa、500kPaに設定した配合について研究を行っている。昨年度、野上は設計強度500kPa、1000kPa、1500kPa配合を対象として、湿潤状態で振幅が設計路盤圧力に等しい繰返し載荷試験を行なった。1500kPa配合の盛土模型では、載荷回数200万回でも噴泥を起こさず、沈下もまったく進行しないことを確認している。また設計強度500kPa、1000kPaの盛土模型では、噴泥現象を確認した。本研究では、設計強度1500kPa配合でも荷重比を大きくすれば噴泥が発生するのではないか、また、設計強度1000kPa、500kPa配合でも荷重比を小さくすれば噴泥が起こらないのではないかという考えから、荷重を小さいところからの段階載荷で湿潤状態における繰返し載荷試験を実施した。噴泥発生の主原因は水であることから、気泡混合軽量土の飽和供試体について、吸水特性および力学特性を検証する要素試験を実施した。この模型試験と要素試験の結果から噴泥発生メカニズムを解明することを目的としている。
模型試験の結果、一軸圧縮強さqu(kPa)と噴泥発生時の最大載荷圧σmax(kPa)の関係をσmax=7.34qu0.43で表すことができ、また、噴泥発生時の荷重比が大きいほど沈下勾配は急勾配になることを得た。要素試験の結果、不飽和供試体も飽和供試体も圧縮強さは同じであり、飽和供試体の場合、高拘束圧状態では軸圧縮に伴い大きな間隙水圧を発生するという結果を得た。本研究の結果をもとに噴泥の発生メカニズムを考察すると、載荷板のサクション効果で盛土表面に浸透した水が気泡の部分を満たして飽和状態になる。圧縮力を受けて発生する間隙水圧によって、骨格部分が両側から支圧された状態でつりあう。この状態では盛土の破壊はなく、噴泥を発生することもない。しかし、視点をもう少し下の層に向けてみると、飽和していない層との境目で、間隙水圧が片側だけから作用するため骨格に曲げ応力等が作用し、骨格が破壊され易い状態になっていると考えられる。一軸圧縮強さよりも低い応力で破壊が進むのは、ミクロな部分での破壊が影響していたからだと考えられる。破壊された骨格は細粒化し水と一緒になって泥ねい化し、噴泥しやすい状態となり噴泥を発生し排出される。このように、間隙が水で満たされた層と満たされていない層の境目の破壊が繰り返されることによって、沈下が進行すると考えられる。噴泥発生荷重の載荷開始から噴泥発生までに時間差があったのは、気泡中に水が浸透し飽和度が高くなるまでの時間および破壊された骨格部分が泥ねい化し噴泥を引き起こすまでの時間だったと考えられる。