小林 正憲

木屑を混入した気泡混合軽量土の研究

海野 隆哉


 本研究は気泡混合軽量土(以下、軽量土)に木屑を混入することで、更なる軽量化と補強効果を期待して、その品質・強度管理試験を行い、実用性を検討する目的で研究を行ったものである。
昨年の小林(与)らの基礎研究より、軽量土に木屑を混入すると一軸圧縮強さが低下する結果となった。その原因の一つとして木屑と軽量土の付着強度が弱かったことが考えられ、付着強度を調べるために、木材と軽量土の付着面に対して直接一面せん断試験を行った。その結果、軽量土同士の付着強度より弱く、一軸圧縮強さが低下する原因の一つとして、木屑と軽量土の付着強度の影響があることが考えられた。また、木屑を混入すると一軸圧縮強さが低下する大きな原因として木屑に含まれる成分(フミン酸)により、セメントの水和反応が妨げられた事などが考えられた。その影響を調べるため、木屑に対し有機不純物試験法を行った結果、木屑は通常のコンクリートでは使用できないと判断された。そこで、2つの方法で改善を試みた。

 一つ目は、石灰による対策であり、軽量土を作成する時に予め石灰を入れ、フミン酸と石灰を反応させることにより、フミン酸の影響を低減できるかを調べ、もう一つは有機質土の改良材として用いられているタフロック4型を固化材として使用することである。石灰による対策は、普通セメントにおいてはフミン酸の影響が低減でき、一軸圧縮強さは、軽量土と近い値を示す傾向がある結果となった。タフロック4型による対策は、これまで使用していた固化材である普通セメントを使用した場合の約2倍の強度を有することが分かった。しかし、タフロック4型でも木屑を混入することにより一軸圧縮強さは木屑未混入のものと比べ約20%低い結果となった。その原因は、木屑混入により、練混ぜ時やその後の養生期間に気泡が消泡・連成して上昇し、上部が弱部となり、強度が低下したのではないかと考えられた。そこで2つの対策を行った。

 一つ目は木屑によって気泡の混入が均一に行われなかったことが連成の原因の一つとして考えられ、それを防ぐために粒径の細かい木屑パウダーを木屑の代わりに混入することである。その結果、水セメント比1.65以上では気泡の消泡・連成は起こらず、一軸圧縮強さは混入前の軽量土より増加した。また、同様の一軸圧縮強さにおいて生比重は軽量土より約2.8%大きく、若干重いものの十分軽量性に優れる結果となった。しかし、フロー値が低下し、流動性の点で問題が残った。

 二つ目の対策は、フミン酸の表面張力を低下させる作用には水分の吸収を容易にする作用もあり、木屑が多く吸水することで混練水が不足し、気泡の消泡および連成が起こったことが考えられたため、混練水を増やすことにした。その結果、気泡の消泡・連成は起こらず、その一軸圧縮強さは軽量土より増加し、軽量性も優れた結果となったが、フロー値が低下し、流動性の点で問題が残った。

以上のような対策を行った結果、有機不純物については改善策があることが分かり、木屑混入軽量土は十分な強度が発揮できることが分かった。しかし、木屑を混入することで流動性が失われることや試験ケースが少ないため、今後更なる検討が必要となる。