小林秀幸

気泡混合軽量土の曲げ強度に関する研究

海野隆哉


 気泡混合軽量盛土は、圧縮強さを基本として設計されている。設計基準(JR東日本)では、圧縮強さ1500kN/m2以上と規定している。その考え方のもとは底面に曲げひび割れを生じさせないということにある。また、盛土に水平力が作用したときの破壊も斜め引張応力によるものである。しかしながら、多孔質で非常に強度の小さな軽量土を対象として、構造物を設計する上で曲げ強さについて研究した事例が少ないのが現状である。曲げ強さを把握することは今後軽量土を用いた構造物を設計する上で重要である。そこで、本研究では軽量土の梁供試体を作製し、軽量土が有する曲げ強さおよび曲げを受ける部材の力学特性を検証するために、曲げせん断スパン比、寸法効果を考慮した各ケースについて試験を行った。以下にその結果を述べる。

 曲げせん断スパン比を1.17および2.0に設定した梁供試体においては2点載荷方式を採用している。供試体に発生するクラックは、全ケースにおいて供試体中央下端付近より発生し、一気に供試体上部まで達した。曲げせん断スパン比1.17のケースでの曲げ強さと圧縮強さの関係はσb=0.17qu+92.3(kN/m2)の関係を期待できる結果を得た。曲げせん断スパン比2.0のケースでは、曲げ強さと圧縮強さの関係はσb=0.25qu-39.1(kN/m2)の関係を期待できる結果を得た。この結果より、曲げせん断スパン比が増加すると、曲げ強さは減少する傾向にあることが分かった。

 圧縮強さを3段階に変えた曲げ試験の結果、圧縮強さと曲げ強さの関係は、圧縮強さが小さいほど、荷重比(曲げ強さを圧縮強さで正規化した値)が大きくなる。また、荷重比が大きいほど、破壊に至るまでの変位が増加することがレーザー変位計およびひずみゲージの測定結果からわかった。
梁供試体の曲げ強さに及ぼす断面寸法依存性を確認するため、梁供試体の寸法が4cm×4cm×16cmのもの、および10cm×10cm×40cmのものの2通りのケースにて実験を行った結果。その結果、梁供試体の断面が大きくなると曲げ強さが減少する傾向にあることが確認できた。

 気泡混合軽量土の純引張試験を実施し、曲げ強さと圧縮強さの関係同様に、圧縮強さと引張強さにおいても相関性が見られることを確認した。圧縮強さと引張強さの関係は、平均してσt=0.15qu-6(kN/m2)の関係を期待できる結果となった。

 圧縮強さ〜曲げ強さ、圧縮強さ〜引張強さの関係から引張強さは曲げ強さの1.5〜2.9分の1程度であることが導かれた。本研究により、圧縮強さが500〜1500kN/m2の範囲の気泡混合軽量土における圧縮強さ、曲げ強さ、引張強さの関係が確認できた。