安齋 勝

引張り応力を考慮した不飽和土の破壊規準

豊田 浩史

現在、不飽和土の強度特性として、三軸試験や一面せん断試験の結果による破壊規準が提唱されている。しかし、試料作製方法や試験手順、試験条件が異なるため、この破壊規準に一般性があるかどうか確認されていない。
そこで、前年度の研究では、中空ねじりせん断試験機を用い、三軸試験機では再現できない応力状態でせん断試験を行った結果、低拘束圧領域での引張り応力発生を考慮した新たな破壊規準を求めることができた。
本年度の研究は、中間主応力係数bを変化させ、前年度提案した破壊規準に適用性があるかどうかを検討した。また、中間主応力係数bを変化させてせん断試験を行うことにより、偏差応力や体積変化などの力学特性についても検討した。
不飽和土の試験は、中間主応力係数b=0.25,0.75について、サクションS=200kPa、基底応力pnet=50〜300kPaで行った。また、飽和土と比較するために、平均有効応力p’=100〜300kPaの飽和土での試験も行った。不飽和土試験、飽和土試験は共に、最大主応力方向a=45°,中間主応力係数b=0.25,0.75の2ケースでせん断試験を行った。
本研究で得られた知見を以下に示す。
@体積ひずみevの挙動は、飽和土においては、中間主応力係数b、平均有効応力p’の大小に関係なく、ほぼ同じ傾向を示す。しかし、不飽和粘性土においては、基底応力pnetが小さいほど供試体破壊時のesは小さい。
A飽和土、不飽和土ともに、中間主応力係数bが1から0に小さくなるにともない、偏差応力qは大きくなっている。しかし、飽和土、不飽和土ともに、その立ち上がりは、ほとんど変わらず、傾きもほぼ同じである。
B中間主応力係数b=0.25,0.75ともに、偏差応力qは、基底応力pnetの増加により大きくなる。しかし、強度増加率は、一定でなく、低拘束圧領域と高拘束圧領域で異なるが、それぞれ線形的な増加率を示す。そのため、破壊線は二つの直線で表される。
C中間主応力係数b=0.25,0.75ともに、高拘束圧領域においては、既往の破壊規準の適用を確認した。しかし、低拘束圧領域においては、基底最小主応力s3-uaがゼロないしマイナス(引張り応力)に達し、破壊がおき、従来の破壊線を下回ることを確認した。その結果、b=0.25,0.75ともに、低拘束圧領域での引張り応力を考慮した新たな破壊規準を求めた。
D低拘束圧領域での引張り応力を考慮した新たな破壊規準は、中間主応力係数bの値に関係なく、適用性できた。