大久保 秀和
側方から流入する運動量によって発生する波動の運動特性に関する研究
細山田 得三
津波は、一般に海域鉛直方向の地盤変位によって発生する。現在、津波を発生させるモデルとしては地震断層モデルから計算される海底地盤の鉛直地盤変位がそのまま海水面の変動量になると仮定して計算することが多い。この地盤変位を計算する地震断層モデルは、断層運動の第1近似モデルでありさらに地盤の変位がそのまま海面に与えられることを仮定している。一方、地滑り及びそれに伴う土石流によっても津波は発生する。土石流などの流入によって発生する津波は、断層運動により引き起こされる津波に比べ頻度は低いものの、歴史的にみてもその規模・被害とともに大きな事例がある。1792年眉山崩壊によって発生した津波は有明海を伝播し、対岸の肥後・天草を襲い多くの死者を出した。しかし、土石流などにより発生する津波の性質は、断層運動に比べて詳細な検討が少なく、未だ津波発生の力学には不明な点が多い。
本研究では、水槽実験で、土砂の代わりに角度の異なる二つの木製のモデルを使い、側方から流入する運動量によって、どのように波が発生し、どのように遡上するのか、基礎的な知見を、実験結果と数値シミュレーションより得ることを目的とする。
実験には、2次元造波水路を使用した。水槽の側面がガラス張りになっているので、ビデオカメラを用いた目視による観測と計測器を使った観測の二つの方法で観測した。側方から流入する運動量を発生させるために三角柱の模型とそれを滑落させるための斜面およびその波の遡上部をコンビネーションパネルで作成した。
数値計算は、分散性の波動方程式であるブシネスク方程式を用いて計算を行った。
実験値と計算結果を比較した結果、実験より進入する物体の角度が大きく、物体が重くなるにつれて、発生する波の波高は大きくなることが明らかになった。また、大きな波高の波が砕波していく様子が観察された。波の遡上は、発生する波の形ではなく、波高と波速によって大きく影響されることがわかった。数値計算では、動粘性係数を変化させて数値計算を行うことによって、実験値と同様の波動現象を得ることができた。