加納 裕美

詳細な地形情報を考慮した氾濫水の挙動に関する数値実験

細山田 得三

近年多発している「都市型水害」は、排水処理能力を上回る集中豪雨、中小河川の氾濫、内水氾濫による浸水、地下空間の浸水、都市機能の麻痺、莫大な被災者数と被害額、という特徴を持つ新たな防災上の課題となった。平成13年6月には水防法が改正され、洪水予報を出す河川を都道府県管理の中小河川にも広げ、指定された河川は、氾濫時に浸水が見込まれる区域とその深さを公表することを義務付けられた。このように、洪水の影響予測に対する社会的ニーズは増加していると言えよう。
しかし、現在作成されているハザードマップは大規模な一級河川を対象としていることが多く、市街地を流れる中小河川を対象としたものは少ないというのが現状である。また、川幅数メートルの洪水氾濫シミュレーションを数百メートル解像度のハザードマップで評価することは困難である。加えて、洪水ハザードマップに示される予想水深は越流や破堤による外水氾濫を対象としたものであり、都市型の水害に多く見られる内水氾濫は考慮されていない。このような点でも、ハザードマップ、特に洪水氾濫シミュレーション技術にはいくつかの課題が残っている。
これらの背景を踏まえ昨年の研究では、マンホール標高データと住区データから新潟県長岡市中心部のDEMを作成し、微細な地理情報を考慮した地上を流れる氾濫流の洪水氾濫シミュレーションが可能であることが分かった。本研究では、排水路網の流れを考慮したモデルを構築し、内水による浸水をも考慮した氾濫シミュレーションを行うことを目的としている。
排水路網の流れの計算では、マンホールと管路の相互関係を表す情報、管路の情報、マンホールの情報を読み込むことにより、マンホール・管路の相互の位置関係、並びに幾何形状を定義する。その上で、一回の時間サイクル内に次のような事が行われる。まず各々の管路について開水路非定常流れの式から平均流速と平均流量を求める。そして全ての管路について諸量を求めた後、今度は各々のマンホール地点について連続の式から水深を計算する。仮想の排水路網を想定し、このモデルを用いて計算を試み、流れの挙動ならびに管路網全体に存在する水の量に関して検討した結果、この排水路網の流れのモデルを妥当であると判断した。
また、地上を流れる氾濫流と排水路網の流れとの結合については、各々のマンホールの鉛直方向高さを基準として、各々のマンホール地点の水深と比較することにより、マンホールから水が溢れ出る場合と、マンホールに水が落ち込む場合を判定した。そして、仮想の地形と排水路網を想定し、計算を試みた結果、排水路網の流れを、地上を流れる氾濫流の計算に反影させることを可能とした。