大澤 範一

三次元地形を考慮した火砕流及び煙型雪崩のモデル化と数値シミュレータの開発

福嶋 祐介

日本は国土の大半を山岳地帯が占めている。そのため火砕流や雪崩によって被害の生じる可能性のある地域が多く存在する。これらを未然に防止するためにはその流動特性を把握し、ハザードマップの作成や災害防止施設の設計に反映させることが重要である。
火砕流は火山の噴火によって巻き上げられた火山灰,火山れきなどの火砕物が空気中に巻き上げられ、それらが重力によって斜面方向に流下する現象である。また煙型雪崩は何らかの原因によって巻き上げられた雪粒子がその重力によって斜面方向に流下する現象である。
この2つの現象はその流動特性の点において類似した現象であり、特に傾斜面上のサーマル流動に酷似している。福嶋らはこの点に着目しサーマル理論を発展させた火砕流や煙型雪崩の理論を提案している。サーマル理論と福嶋の火砕流および煙型雪崩の理論は、その概略において同じであるが大きく異なる点がある。それはサーマルの理論では浮力源が一定に保たれると仮定するのに対して、火砕流および煙型雪崩の理論では、浮力源すなわち粒子の総量が変化する点である。これは煙型雪崩において、粒子の巻き上げを考慮しないと、流下方向に対して爆発的に成長する雪崩の流動を表現することができないし、斜面への沈降を考慮しないと、火砕流や煙型雪崩が緩勾配斜面に到達したときに静止に至る様を説明することができないためである。
しかし福嶋らの理論は火砕流や雪崩の横方向の広がりが一様であると仮定されている。これに対して福嶋・早川・備前(1993)は、3次元傾斜サーマルの流動特性を明らかにすべく実験を行った。これは、淡水中に塩水による3次元傾斜サーマルを形成させ、流動機構を調べたものである。これによって、未知数にサーマルの横広がりを加えた3次元傾斜サーマルの基礎方程式が提案された。
本研究ではこの3次元傾斜サーマルの流動特性の理論を福嶋らの煙型雪崩の理論に適用し、そのモデル化を検討した。これにより、3次元地形を入力データとし、火砕流および煙型雪崩の高さ、速度、粒子の濃度、乱れエネルギー、温度などの他に、その走路や横方向への広がりも解析することが可能である数値シミュレータを開発した。またこの数値シミュレータと福嶋らのシミュレーションモデルの解析結果を比較することで、その違いや特徴を明確にすることが出来た。なお本研究で開発した数値シミュレータでは入力地形データとして国土数値情報標準2次メッシュを用いることが可能である。