吉田慎司

赤外線カメラを用いた夜間および冬期間における斜面監視システムの開発に関する研究

指導教官 鳥居邦夫


 現在、土砂崩れや斜面崩壊による被害が相次いでおり、斜面監視体制の強化が必要となってきている。そのために、崩壊の前兆を捉えるためにさまざまな手法が開発されてきている。その中に本研究室で開発されたモノクロCCD(Charge-Coupled Device)カメラを用いた斜面監視システムがある。このシステムは標柱による移動量計測システムや伸縮計による地盤収縮変動量観測などの現行の斜面監視方法と比較して安価で、遠隔地での無人自動監視を可能にする等の長所を持つ。しかし、このシステムでは、観測対象である斜面にターゲットを設置し撮影して行うものであり、設置と撤去に危険を生じ、システムの機動性が高いとは言いにくい。さらに夜間や地滑りの起こりやすい冬期間の観測が雪の影響で非常に困難であり、日照の影響を受けやすいといった問題点がある。

 そこで、温度を感知して画像にすることのできる赤外線カメラを用いて、モノクロCCDカメラとは違う情報を取得することによって夜間や雪の降る冬期間での計測が可能であると考え、観測対象を温度が80℃前後まであがるハロゲンランプをターゲットに選択し、ランプ部の重心座標値を輪郭抽出法を用いて、連続計測実験を行った。

 この結果、ハロゲンランプを用いることにより赤外線カメラでの夜間の監視計測を可能にし、雪の降る冬期間での雪の影響を受けずに監視計測を可能にした。しかし、現場設置や撤去の危険性や電源確保という問題点からモノクロCCDカメラと同様に実用は非常に困難であると考えられる。

 そこで、観測対象として比較的周囲よりも温度の高い樹木を選択し、ブロックマッチング法を採用し、連続計測実験を行った。
その結果、相互相関法を用いたブロックマッチング法により夜間の計測を可能にし、雪の降る冬期間で雪の影響を受けずに観測対象である樹木の移動量の監視計測を可能にした。さらに、モノクロCCDカメラで問題となっていた日照の影響も受けずに監視が可能である。しかし、この方法では、逐次的に前検索を行うので計算時間があまりにもかかっていしまうという欠点がある。そこで、計算時間短縮のためにFFT(高速フーリエ変換)を用いることにより相互相関法と同等の精度が得られる。したがって、FFTを用いたブロックマッチング法を採用することにより実用は可能である。