交通工学研究室 浅野正宗
樹脂補強による埋設ジョイント舗層体の耐久性改善に関する検討
指導教官 高橋 修
埋設ジョイントは,道路橋におけるノージョイント工法の一種で桁の継ぎ目部分に伸縮装置を据え付けることなく橋面舗装を連続して施工し,継ぎ目をアスファルト混合物で埋め込んで表面に現れないようにしたものである.
本研究で対象としている埋設ジョイントは舗装体と床版との間にシート等(せん断層)を設置し,そのせん断変形性能によって変形を舗装体全体に分散させるひずみ分散機能を有している.
近年,道路構造令の改正に伴い環境負荷の少ない舗装として開粒度アスコンが積極的に取り入れられるようになり,橋面舗装にも多く用いられるようになった.それに対応し,埋設ジョイント舗層体の表層部も開粒度アスコンを用いる必要がある.しかし,埋設ジョイント舗装体が受ける変形作用に対し,開粒度アスコンは骨材飛散や骨材の割れ・磨耗といった破損が生じやすいため,舗装体を強化する必要がある.
本研究では,開粒度アスファルト混合物の補強方法として,開粒度アスコンの表面から骨材間の空隙に特殊樹脂を流し込んで硬化させる方法について検討した.骨材間の結合を強化し,強制伸縮変位に対する強度特性や曲げ引張に対する抵抗性が改善されるものと期待される.
本検討は,樹脂補強による効果を明らかにし,その有効性を確認するものである.
この補強の効果を評価するにあたり,本検討では開粒度アスコンに樹脂補強を施したものと施していないものに加え,一般的に用いられる密粒度アスコンの供試体を作製し,それぞれに対して直接引張試験,静的曲げ試験,繰返し曲げ試験を行い評価した.
伸縮分散型の埋設ジョイントの場合,桁の伸縮変位により舗装体が引き伸ばされる際に,ひずみ分散機能があるため,引張に対する舗層体の強度特性は非常に重要になってくる.特にスティフネスが小さいとひずみが舗装体全体に分散されず,桁の遊間部に集中するため,早期の破壊につながることになる.
直接引張試験および静的曲げ試験の結果より,樹脂補強を施すことで破断時ひずみは少し低下したが,スティフネスの低下を防いだ.スティフネスが改善されることでひずみ分散性能が向上するため埋設ジョイント舗装体の耐久性改善につながると考えられる.
次に,繰返し曲げ試験により舗層体に働く動的変形に対する疲労抵抗性を評価した.それによると,開粒度アスコンは高粘度改質アスファルトを用いているため密粒度アスコンに比べはるかに優れており動的変形においては十分な疲労抵抗性があることが確認された.
以上のことから,開粒度アスコンに樹脂を用いることは耐久性を改善するためには必要な工法である.といえる.