北上幸

北陸地方における舗装供用性の遷移予測に関する検討

丸山暉彦

近年,蓄積した道路施設のストックを適切に維持管理することが道路管理者に求められており,舗装に関しても維持管理の技術が重視されるようになってきている.
舗装は,オーバーレイなどの修繕を行うことにより,その構造的機能,自動車の走行に対するサービス性能を回復させるという点で,他の土木構造物にない特殊性を有しており,そのために舗装路面の破損に対する評価の信頼性は,道路管理の経済性に直接的に影響を及ぼす.よって,舗装の維持管理を計画的,かつ経済的に行うためのツールである舗装管理システムを構築するためには,舗装の評価に対する合理的な情報処理システムの確立が強く求められる.
しかし,舗装の劣化に関する力学的なアプローチにおいては,アスファルト舗装の流動変形など,種々の破壊モードに対する基準を具体的に設定することは困難であり,また,ひび割れによる破壊が生じた以降の使用限界状態,あるいは終局限界状態,といった限界状態に対する力学モデルを作成することもきわめて困難である.これらがもし解決され,種々の力学モデルが作成されたとしても,関与する設計変数には確率論的な評価が困難なものが数多く含まれる.
そこで本研究では,舗装の劣化を確率論的に評価するため,補修工法については新設,もしくは打換えの舗装とオーバーレイによる修繕を行った舗装,路盤材については瀝青安定処理路盤の舗装と粒度調整路盤の舗装という4組の組み合わせの舗装破損データを用いて,その舗装の種類別にマルコフ連鎖を適用し,MCI(Maintenance Control Index)の劣化モデルを作成し,北陸地方で用いられている現行の劣化モデルと比較・検討を行った.
また,通常の供用性モデルでは評価指標としてMCIが使用されているが,ファジィ理論を導入した舗装管理指数FPCI(Fuzzy Pavement Condition Index)を新たに導入し,その適用性についても検討した.

 以上のことから,マルコフ連鎖を用いた供用性予測の手法を提案した.また,MCIとFPCIを両方使用することで,より舗装の状況や,遷移過程を明確に捉えることが出来るため,維持修繕計画の作成をより合理的に行うことが出来ることがわかった.