齋藤 加奈子

中心市街地に立地する公共施設がもたらす波及効果〜ながおか市民センターを対象として〜

 
中出 文平 樋口 秀

                                        
近年、長岡市ではニュータウン地区、千秋が原地区、川崎地区等の郊外部において各種都市機能の集積が進んでいる。一方、中心市街地では道路、公園等の都市基盤をはじめ、沿道の建物など施設の老朽化が進み、活力の低下が著しい。
元来、中心市街地とは公共交通の便がよいことから交通弱者にとって立ち寄りやすく、また集まりやすい場所である。この中心市街地で、平成13年10月に新たな公共施設である「ながおか市民センター」が開設された。そこで、ながおか市民センターの利用状況や利用者の特性を把握し、この新たな公共施設が中心市街地にもたらす波及効果を検討することを本研究の目的とする。
まず、同様の機能を持つ市役所と市民センターの利用者に対してヒアリング調査を行い、利用者の個人属性から利用特性を分析した。この分析から、市役所ではその機能から利用者の年代が偏っており、居住地から直接バスで利用できる人は少なく、自家用車を交通手段とする利用者が多い。一方、市民センターでは比較的幅広い年代が利用しており、中心市街地に居住する人の多くが徒歩で来館している¥。つぎに、市役所や図書館の機能が中心市街地に移転されたことにより、市民センター開設後における利用者の動向に変化が見られたことを示した。そして、市民センター利用者による周辺店舗の利用状況を調査した結果、駅を中心とした商業店舗は交通弱者による波及効果が大きいことを明らかにした。また、市民センターに新設された施設および機能によって利用者は確実に増加し、中心市街地の集客力の向上に繋がっていることを明らかにした。
以上のことから、中心市街地にもたらす波及効果を交通弱者、市民センターの利用頻度の高い利用者、新設された機能の3つの角度から検討した。利用頻度の高い利用者は会社員や主婦が多く、主に自家用車を交通手段として利用している。このため、専用駐車場が設置されている金融機関や大型商業店舗を利用する傾向があり、これらの利用者が中心市街地に波及効果をもたらすには駐車場が必要である。現状では、市民センターの専用駐車場を設置することは非常に難しいが、中心市街地縁辺部にこの機能を新設することで、周辺店舗に波及効果がもたらされることが窺える。