増岡 雄一

地方都市商業地域におけるダウンゾーニングの可能性に関する研究−長岡市をケーススタディとして−

中出 文平  樋口 秀


 現在、地方都市の中心市街地の衰退は全国的な都市問題として認識されている。一般的な衰退の要
因としては、モータリゼーションの進展に伴う郊外化、郊外部の絶対的な地価の安さや土地・建物取
得の容易さ等が挙げられている。また、現行法制度の画一的な運用が地方都市の市街地形成にもたら
す問題点として、地域地区制度では低い容積充足率、区域区分制度では市街化区域内農地の残存が指
摘されている。長岡市も同様の問題に直面しており、都心部で高い地価が形成され、都心居住の妨げ
や事業所の郊外立地を助長し、中心市街地の衰退が起きていると考えられる。

 本研究では、必要以上のボリュームや広がりを持った市街地のコンパクト化を図り、都心居住や事
業所の都心立地、実態に即した地価へ是正を促す一手法としてダウンゾーニングの在り方を示すこと
を目的とする。

 まず、長岡市の中心商業地域を対象として既存建築階数状況を現地調査により把握した。次に、街
区単位で街区別容積充足率及び敷地使用率を求め、ダウンゾーニングの可能性の高い街区を抽出した。
同地域の指定容積率600%地区では約8割以上の建築物が5階以下であること、同400%地区でも約7割
以上の建築物が2階以下であり、容積充足率の高い街区も見られるが全体として両地域とも容積充足
率は50%以下であることが明らかになった。 次に、街区別容積充足率、敷地使用率、固定資産税の税
額の基礎となる固定資産税路線価の指定状況と用途指定の在り方を踏まえ、ダウンゾーニングの可能
性の高い街区として、6つの街区を抽出した。さらに抽出した街区において実際のダウンゾーニング
の可能性を明らかにするために、当該街区の土地所有者を対象に、ダウンゾーニングの可能性に関す
る意向調査を行い、土地の取得形態、今後の土地利用の意向を明らかにした。ダウンゾーニングの可
能性としては、指定容積率を下げることに「賛成」が「反対」を大きく上回る結果となった。「賛成
」の内訳としては「固定資産税などの税金が安くなる」が最も多い結果となり、また「反対」の内訳
としては主に「資産価値の低下」が挙げられた。

 以上より、現在そして今後の土地利用状況と、地権者の意向を踏まえた上でのダウンゾーニングの
在り方として@居住環境や生活環境の保全A長期的な視点で見た資産価値の向上B沈静化した土地取
引の活性化、といった3点を念頭に置いた施策について提言した。