花田 信介

都心周辺部の住宅ストックと世帯の多様性

中出 文平

現在、地方都市の多くでは中心部人口が減少している。都市が居住機能を持続させるためにも、居住機能にほぼ特化し多くの世帯を抱える都心周辺部での人口・世帯確保が重要である。さらに、持続性ある住宅地を築くためには、世帯のライフステージ変化による世帯構造・世帯規模変化に対応し得なければならない。
そこで本研究は、地方都市都心周辺部の住宅ストックと世帯の関係性に着目し、住宅ストックによる居住世帯像の差異、住宅と世帯構造変化の関わりを明らかにし、多様な世帯が住まえる地区住宅ストック像を明らかにすることを目的とする。
まず、国勢調査より、都市全域の世帯と住宅ストックの状況を把握し、エリアによる特性および都心周辺部の特性を明らかにした。都心周辺部は他エリアに比べると住宅が狭く、高齢者世帯等の今後世帯規模が縮小する世帯が多い。次に、都心周辺部の各地区を住宅と世帯の状況から分類し、各区分ごとの市街地特性の把握とともに、@街区割りと道路体系、A市街地の開発過程、B農地と空地の状況等の市街地特性が住宅・世帯構造に与える影響を示した。
現状の世帯・住宅ストック構造から、A現在世帯の多様性が失われている地区、B現在も世帯の多様性が保たれている地区、C共同住宅が多い地区、D戸建住宅に偏っておりかつ一時期に開発された地区の4地区を定義し、それらの地区を対象にアンケート調査を実施した。まず、世帯構造変化のメカニズムを把握することで、戸建住宅の居住世帯モデルが多世代から核家族居住へと変換していることを示した。また、住宅ストックと世帯の関係を把握することで、A〜Dの特性を説明できた。Aはこの20年間住宅ストックにほとんど変化が無く、かつての多世代居住が現在は成立していない。Bは段階的に共同住宅が建設され、戸建住宅建築年のずれから世代変化が一時期に集中しない。Cは若年者の共同住宅居住層、中高年の戸建住宅居住層の2極化が生じており、その間の世代がいない。Dは住宅建設年・世帯入居年が偏っているため、そのまま世代が移行し、ほぼ中高年者のみの地区となっている。これらの知見を踏まえて居住者の意識を検証した結果、持続的な住宅地を築くためには、戸建持家に居住する前段階の若い家族世帯向けの住宅の整備が必要であることを示した。その具体策として、地区の空地・空家を利用でき、住民の賛成意見が多数を占める借家利用を想定した戸建住宅ストックの整備が有効であることを明らかにした。