西川 悠介

地方小規模都市の市町村マスタープランにおける中心市街地活性化の位置づけに関する研究

中出 文平

現在、地方小規模都市の多くが市街地の無秩序な拡大によって中心部が空洞化し、衰退している。この状況を打開するため、各自治体が中心市街地活性化基本計画を策定している。しかし中心市街地活性化を目指す自治体が多くなっている一方で、郊外化が進行しているのが現状である。
そこで本研究は、都市の全体将来像を示す市町村マスタープランと中心市街地活性化基本計画の連携を問題視し、市町村マスタープランの役割が大きい非線引き都市、中心市街地の衰退が著しい人口5万人未満の地方小規模都市に着目し、市町村マスタープランでどのように中心市街地活性化を位置づけるべきか、そして中心市街地活性化の実現に向けた体系づくりについて明確にすることを目的とする。
まず対象24自治体の現況を分析し、中心市街地衰退の状況、少子高齢化により将来にわたって中心部が衰退していく恐れがあることを示した。次に、都市構造の多様性について分析し、地形、人口分布、中心部への人口集中率、市町村マスタープランの人口カバー率、広域圏での位置づけといった都市構造の違いが、市町村マスタープランと中心市街地活性化基本計画の整合を図る際の難易度、そして市町村マスタープランの中心市街地活性化に関する実効性に影響を及ぼしていることを示した。市町村マスタープランの内容の分析からは、ほとんどの自治体が市町村マスタープランでは郊外化を容認し、推進する方向で計画されていることを示した。
得られた知見を踏まえて、24自治体を市町村マスタープランと中心市街地活性化基本計画の整合が図られているか否か、都市構造的に整合が図り易いか否かから、@都市構造のデメリットに打ち克つ計画一致型、A都市構造のデメリットの影響を受けた八方美人型、B都市構造のメリットを活かした計画一致型、C都市構造のメリットを活かしきれていない八方美人型の4タイプに分類した。
各タイプの代表1自治体に対してヒアリング調査を行ったところ、中心市街地活性化を目指す上で「都市構造の問題」、「悲観的なことは計画として描けない」、「市町村マスタープランはまちの全体将来像を示すものであって地域ごとの利便性向上が優先されている」、「中心市街地活性化に対する住民の意識が希薄である」といったことがネックとなり、各自治体とも中心市街地活性化を目指したいが、現実としては郊外を整備せざるを得ない状況であることが分かった。