福田 江津子
Real-time PCRを用いたメタン生成古細菌の定量による各種消化汚泥のメタン生成活性の評価
指導教官 大橋晶良、原田秀樹
嫌気性処理システムの担い手であるメタン生成古細菌のメタン生成活性は処理性能に大きく係わる影響因子である。そのため、システムの運転・維持管理の指標の一つとしてメタン生成活性試験が行われている。通常、回分試験では、メタン生成量は時間と共に直線的に増加するが、活性が低い汚泥の場合には非常に時間を要する上、指数的に増加し曲線を描く。これは、長期間の試験中に細菌が増殖してしまうためであり、このようなケースの場合、従来の評価方法ではメタン活性値を導き出すことは困難であった。
そこで、活性の低い汚泥の回分試験結果からでもメタン生成活性を評価できるよう、細菌が理論的に増殖すると仮定してメタン生成量から比増殖速度、さらにメタン生成活性が求められる数学的モデルを構築した。この手法を用いて消化汚泥よりも数オーダー低い活性の汚泥でも評価することが可能となった。しかし、回分試験の時間を短縮することはできず、迅速な測定方法が望まれている。
本研究では、メタン生成活性の評価が困難で長時間を要するサンプルでも、Real-time PCR法を用いて、これらの問題を解消したメタン生成活性の迅速な評価が可能ではないかと考え、まず、メタン生成細菌のReal-time PCRによる定量化方法を確立した。次に、純菌を用いた回分培養試験より、メタン生成活性値とReal-time PCR法で求めたメタン生成細菌量との関係を調べ、消化汚泥サンプルへの適用性について検討した。活性試験結果から、サンプリング時の瞬間メタン生成速度を求めることができ、このメタン生成速度と16S rDNA濃度の関係をプロットすると線形の関係が見られた。グラフの傾きはM. conciliiの16S rDNA copy数当たりのメタン生成速度を表しており、6.68_10-6[mgCOD-CH4・copy-1・day-1]の値が得られた。すなわち、Real-time PCR法で16S rDNAコピー数を測定すれば、活性試験を行わずともメタン生成活性が評価できることを示唆している