澤田 浩介 埋立地模擬カラムによる有機性廃棄物初期分解過程と温室効果ガス放出の挙動 原田 秀樹、 大橋 晶良  埋立地は二酸化炭素に次ぐ温室効果ガスであるメタンの人為的放出源として、その対策が重要視されている。本研究では嫌気性、上層好気性および準好気性埋立地を模擬カラムにより人為的に再現し、炭素および窒素の物質収支を基にした発生ガスおよび浸出水の挙動から、異なる埋立地構造における廃棄物の分解メカニズムを明確にするとともに、主に16S rDNA/RNAを分子マーカーとした分子生物学的手法を用いることによりメタン放出に関与する微生物群集の解析を目的とする。本論文では廃棄物埋立地模擬カラムを立ち上げ、実験開始から428日間の初期分解過程における詳細な観察・解析を行った。  埋立地構造の違いに関わらず、実験開始から150日目までの酸生成期に有機汚濁物質の流出が著しく起こり、投入量に対して3条件ともに炭素約14%、窒素約40%が流出した。150日目以降の酸生成・メタン生成期では著しい流出は低下したが、有機汚濁物質濃度はVFAの挙動に大きく依存しており、好気領域を広く有する準好気条件ほど低い濃度で安定した。従って埋立地に浸出水処理施設を設ける場合、好気領域の拡大および浸出水循環と組み合わせた埋立地構造にすることにより、初期高濃度汚濁物質の低下を図り、酸生成・メタン生成期以降の浸出水濃度で処理施設を設計することが望ましい。  発生ガスは実験開始直後に3条件ともに二酸化炭素および水素が著しく発生した。その後、好気条件において二酸化炭素の発生が活発に続いたが、嫌気性では水素の減少に伴い、発生量は少ないもののメタン生成が緩やかに起こり、カラム気層部におけるメタン濃度は25%に達した。初期428日間における発生ガスを基にした温暖化寄与率を評価した場合、好気条件における二酸化炭素の発生が著しいため、最も広い好気領域を有する準好気が最も高い結果となった。  FISH法による微生物解析では、廃棄物層上部からメタン酸化細菌が3条件ともに検出された。特に上層好気性では、これまで埋立地表層において報告されている菌数を上回る1.3±0.2×109 cell/g-dry-wasteのメタン酸化細菌が確認され、嫌気性および準好気性よりも1〜2オーダー多く存在した。加えて,428日間におけるメタン発生量も上層好気性が最も少なかったことから、埋立地における好気領域の拡大は、メタン酸化細菌の活動を活発にし、メタン放出抑制を促進できる可能性が示唆された。  本実験では廃棄物埋立地の初期分解過程における発生ガスおよび浸出水の劇的な挙動および好気領域の拡大によるメタン放出抑制を明確にした。今後さらに長期的に物質収支を把握し、メタン放出に関与する微生物の解析を行うことによって、地球温暖化の抑制および埋立地早期安定に効果的な埋立構造や管理概念の構築がなされることを期待する。