水圏土壌環境研究室  M2 五十嵐英明 オゾン処理による下水汚泥の可溶化と嫌気性消化の効率化 指導教官  原田秀樹,大橋晶良  現在,廃棄汚泥量の減容化および消化ガスの回収によるエネルギー有効利用の面から嫌気性消化法の適用が積極的に検討されてきている。しかしながら,嫌気性消化法は加水分解・可溶化段階が速度律速となっており、改善が求められている。オゾンは、高分子有機物を低分子有機物へと分解するとともに、細菌細胞の細胞壁に穴をあけて細胞内物質を溶解・流出させる作用がある。本研究は、オゾン処理によって汚泥可溶化がどのように進行するのかを把握し、嫌気性消化を効率化することが目的である。そこで,COD・SS等の分析からオゾン処理による汚泥の可溶化効果について検討を行った。また,回分実験によるメタンガス生成量からオゾン処理汚泥の生分解性について調査を行った。さらに,オゾン処理による微生物の溶菌について分子学的手法を用いて解析を行った。  オゾン処理実験から,オゾン反応率はオゾン処理時間と比例関係があり,オゾン反応率を一定とした場合,流入オゾンガス濃度を大きくすることでオゾン処理時間を短縮することがわかった。オゾン処理前後のCOD分析結果から,ほんのわずかのオゾン量で固形性COD成分が可溶化することがわかった。溶解性COD成分の増加量は流入オゾンガス濃度には依存せず,オゾン反応率が高いほど固形性COD成分が可溶化されて溶解性COD成分となることが示唆された。また,可溶化率はオゾン反応率とほぼ比例関係にあり,オゾン反応率の変化によって一直線に増加することが確認できた。オゾン処理による消化汚泥の無機化はあまり見られず,無機化率の増減は−3〜5 %の範囲であることがわかった。また,生分解性試験結果より,流入オゾン濃度が一定の場合はオゾン反応率が高いほどメタンガス生成量が多いことがわかった。流入オゾン濃度の違いによるメタンガス生成量の変化はほとんどみられなかった。これより,メタンガス生成量は汚泥可溶化率と同じ傾向を示すことがわかった。  位相差顕微鏡を用いた汚泥観察より,オゾン処理によって消化汚泥が分散・可溶化していることを確認した。また,DAPIによる汚泥染色実験から,オゾン反応率0.05 gO3/gVSSの汚泥内微生物総数は消化汚泥の約半分であることがわかった。さらに,LIVE/DEAD Kitを用いた細胞染色実験から,オゾン処理によって細胞全体に対する生菌数の割合が減少することが確認できた。これは,オゾン処理によって微生物細胞が傷つけられていることを意味しており,生菌存在率は消化汚泥の約31 %に対し,オゾン反応率0.03 gO3/gVSSで約18 %,0.05 gO3/gVSSで約9 %,0.10 gO3/gVSSで約3 %,0.15 gO3/gVSSで約1 %であった。また,溶菌された細胞の割合は0.05 gO3/gVSSでは約45 %,0.15 gO3/gVSSでは約87 %であった。