緒方 寿人

長岡市における2時期同時解析による土地被覆変遷領域の抽出

指導教官:力丸厚、向井幸男、高橋一義


 現在、人工衛星からもたらされる衛星データは様々な分野で利用されている。その例
として、環境の変化や気象状況の把握、森林減少領域や土地被覆変遷の抽出等が挙げ
られる。

土地被覆変遷抽出を行なう際、過去の論文では各時期の土地被覆分類を行った後、
それらを比較することで土地被覆変遷の抽出を行っていた。しかし、各時期を同じ条件 の下分析するのは難しいと考えられた。そこで、本研究ではこれを回避するために各時
期での分析は行なわない。

 本研究では、LANDSAT衛星により観測された1993年並びに1999年の2時期にお
ける長岡市の土地被覆変遷領域の抽出をNDVI(正規化植生指標)、BI(裸地指標)、
SI(陰影指標)、AVI(改良型植生指標)そしてCI(コンクリート指標)の5つの指標
を用い、その差分を取り、そしてそれらを組み合わせることにより行った。しかし、
これだけでは、例えば森林の微妙な活力の違いで森林が森林でなくなったと判断される
恐れがあった。そこで、閾値を設定することによりこの問題の解決を行った。さらに、
土地被覆変遷領域の抽出手法であるが、1993年と1999年の長岡市における代表的な
変遷領域にのみ注目し、土地被覆変遷領域の抽出に使用する指標を決定し、変遷領域
を抽出した。本研究では注目地域から“宅地建造域”並びに“森林開発域”の抽出を行
った。

ここで、まず閾値の設定についての検証を行ったところ、平均値から標準偏差の
2.00倍以上・以下の範囲を指標増加・減少域としたさいの誤差が3.7%と比較的小さな
値となった。そして、前述の閾値の下抽出された代表的な3つの変遷領域の面積と長岡
市都市整備部や等の資料に記載されている用地面積と比較した。その結果、2つの領域
については5.00%以下の誤差であったが、1つの領域については変遷領域と抽出され
た場所が2つの領域の和であったこと、比較に用いたデータが対象期間外であったとい
う理由から大きな誤差となった。

 本研究の手法により難しいと考えられる各時期の同条件下による解析の回避を行っ
たことに加え指標という数値情報を用いることにより地理情報や土地感覚が乏しい土
地に対する土地被覆変遷領域の抽出が容易になった。将来、解析に用いるための新た
な指標が開発され、指標と土地被覆変遷内容の関連付けの確立が行なわれた際には有力
な土地被覆変遷領域抽出手法の一つになることが期待される。