五十部 豊
航空写真による林内の空間分布特性を用いた樹種分類
指導教官 力丸 厚、向井 幸男、高橋 一義
現在、森林保全の為に森林のモニタリングをすることは必要不可欠である。本研究では森林のモニタリングに航空写真を用いたが、航空写真は空間分解能が高いという利点があり、樹冠の形状等の情報を得るのに適している。しかし、航空写真では画素あたりの大きさが小さくなる為に、1つの画素で樹木全体を捉えることは難しく、画素ごとの分類では良い分類結果を得ることは難しいと考えられる。
そこで本研究では、新潟県聖篭町の松林を対象とし、従来の画素ごとに分類する方法に加え、その結果から更に、周辺の画素を考慮した分類を行い、より正確な樹種の分類手法を開発することを目的とする。また本研究で開発した分類手法の信頼性を検証する為に、現地調査と解析結果との比較も行う。
まず、画素ごとに分類し、その結果を用いて空間分布特性を用いた樹種分類を行うために、各クラスごとの局所領域内での存在率画像を作成する。なお、局所領域の範囲は3×3・7×7・11×11・23×23の4つのフィルタを用いた。画素ごとの分類で分類クラスを6としたので、4つの局所領域で6枚ずつ計24枚の存在率画像を作成し、それらの画像を組み合わせて樹種分類を行った。
樹種分類の結果と現地調査での結果を照らし合わせた結果、7×7と23×23フィルタ内の存在率画像を用いて分類した結果が最も分類精度が良い結果となった。これは、広いフィルタでは1つのフィルタで樹木の群落の情報を得ることができるので良い分類結果が得られたと考えられる。またこのことから、23×23フィルタは対称領域での樹木の間隔に的確な大きさのフィルタであったと言える。しかし、分類精度にあるていどの信頼性があることが分かったが、樹種の境界が明確には表われなかった。これは、存在率画像を作成する際に画像全体の存在率画像を作成したために、森林マスク以外の画素値が0の部分も含まれ、この部分の情報の影響により、森林マスクの境界部分の分類結果に誤差が生じ、正確な分類結果を得ることができなかったと考えられる。
結論として、今後本研究の手法を確立させていくためには、分類の目的や範囲に応じた空間情報を選択することが重要だと言える。そして、このことが高い分類精度を得ることにつながると考えられる。