寺岡 延尉

衛星画像等を利用した水稲生育段階の分布把握とその利用について

力丸 厚、向井 幸男、高橋 一義


 近年、全国で米の品質向上および維持することが要望として挙がっている。
この要望に対して稲作を行う農家を対象に、農協等の機関が生育調査を行い、
そこから得られた情報を基に栽培管理等の指導にあたっている。この指導は気候、
土壌などの情報を把握することで行われているが、水稲の生育状態を把握することが
最も望ましい。しかし広範囲に分布した水田において、現地調査のみで全ての水田の
成育状態を把握することは現状では不可能である。

 本研究では現地調査データから得られた水田の葉面積被覆率変換モデルを衛星データに
適用して、出穂前における水稲の生育分布状況を調べ、利用することを目的とした。

 衛星データから得られる情報に植生指標と植生被覆密度がある。植生指標は被覆率と
色の強さに対応しているが、出穂前における水田の状態は植生、土壌、水が混合している
状態であるため植生指標の値は安定しないことから、本研究では植生被覆密度を使用した。

 そこで、LANDSAT衛星画像データから算出する植生被覆密度と、現地観測により取得した
画像から算出する葉面積被覆率を対応させることで、水稲が植えられてどれくらい経過した
状態にあるかをあらわした生育段階を算出し、マップ化することで分布の把握を行った。

 さらに、出穂前の情報である生育段階と、出穂後の情報であるNDVI、刈り取り時の
情報である蛋白質含有量という、異なる3時期における情報の関係を調べた。これらの
データが揃っている1999年を対象としており、生育段階は6月14日、NDVIは8月9日の
衛星画像データから作成した。

 3情報の関係を調べる際、水田位置の把握が容易に行えるように、高解像度である
IKONOS衛星画像データを利用して、水田の輪郭を表現した区画データを作成した。
これにより対象水田内に含まれる画素の判別が容易となった。

 NDVI値と蛋白質含有量の関係を調べた結果、有意な正の相関が見られたことから、
新潟県においても条件を満たした水田では蛋白質含有量の推定が可能であることを確認できた。

 このことから生育段階との対応は蛋白質含有量のみとした。この結果には一定の関係が
見られなかったが、これは出穂前とそれ以降の栽培管理の評価に使用することができ、
翌年以降の指導を行う際に有効であると考えられる。
また、提供データに含まれていた食味データの内部相関を調べたところ、蛋白質含有量と
アミロース含有量が相関関係にあることがわかった。これにより、NDVIから蛋白質を介して
アミロースが把握できる可能性が明らかとなった。