角山 智美

LANDSAT−TM画像解析による森林樹冠密度と林齢情報の比較検討

指導教官 力丸厚、向井幸男、高橋一義

近年における地球規模での森林資源減少は深刻な問題となっており、適切な対策をうちたてるためにもより正確な資源情報把握が必要である。新潟県においては、森林資源情報管理は、資源情報が記載された森林簿と対応した地図である森林基本図を電子データ化した森林GISを用いて行なわれている。しかし、実測による森林GIS更新は莫大な費用・労力を要するため不可能であり、申請箇所のみにとどまっている。
そこで、広域同時観測性を持つ衛星データと組み合わせた森林資源情報作りが効果的であると考え、検証を行なった。本研究では、ほぼ毎年撮影され現況を示している衛星データから算出された計測精度の安定している被覆密度情報と森林GISに記載されている情報の中でも信頼性の高い林齢(植林時期)情報とを比較検討することにより、両者の情報の整合・不整合を解析し、更新候補地抽出を行ない効率的な更新方法開発への可能性を探った。
まず1999年に撮影されたLANDSAT−TMデータを用いて、熱帯林などで活用されている森林樹冠密度(FCD)モデルによって森林の被覆密度算出を行なった。次に、グランドトゥルースデータとして解像度の高い空中写真のデジタルオルソ画像を用いて現況における情報として、衛星から算出されたFCD値との検証を行なった。空中写真からサンプル地区を抽出して行ない目視により算出したFCDと衛星データから算出されたFCDを比較すると相関係数0.757が得られた。よって、相関があると判断し両者の間の関係式を求め、この関係式から衛星データから算出されたFCDを補正し、森林GISにおける林齢情報との関係を求めた。FCDの経年変化は、葉量の経年変化とほぼ似た形状を示した。葉量は、林冠の成長と大きく関係することがわかった。なお得られたグラフから、林齢約20年で樹冠の成長は飽和することから、若年林における林齢とFCDの関係式を算出し、この式に森林GISにおける林齢情報を式Bに代入し、GISから予想されるFCD分布図を作成した。これを衛星データから算出されたFCDと比較し、FCD=0を示す領域、衛星データとGISで異なる値を示す領域および衛星データとGISで同じ値を示す領域について検証を行なった。
以上の検討解析において、若年林におけるスギで衛星データから算出した森林樹冠密度分布を用いて、大局的ではあるが森林の生長状態・森林簿における記載ミス等を把握することができ、森林GIS更新の際に候補地を搾り出すことが可能であると言える。