酒井 豊
衛星画像等を用いたアフガニスタン国内における農耕適地条件の把握手法の検討
向井幸男
干ばつの影響や政治的な要因により、国内の農産業が大きな被害を受けたアフガニスタン国の復興には、農耕地の確保や拡大が重要であり諸外国の援助が必要不可欠である。だが、現地調査の実践を阻む要因として国内の治安の不安定さや内戦の影響による地雷の残存などの問題がある。本論文では、現地における様々な問題に対し遠隔からの観測が可能で、広範囲かつ経年的なデータが取得できるなどのリモートセンシング技術の特徴を活かし、過去の植生指標の変動傾向をNOAA-AVHRRセンサの情報から作成された全球植生指標を用いて把握を行い、降水量や土壌などの自然要因グローバルデータセットとの関係より乾燥地域であるアフガニスタン全域における農耕活動に適した地域の条件を把握する手法の構築を目的した。
NOAA-AVHRRセンサより作成された1981〜97年までの植生指標の平均値を平年値、降水量に恵まれ豊作であった1998年、干ばつの影響により穀物収穫量が低迷した1999年および2000年の平均値データを使用し、平年値に対する各年度の植生指標の変動傾向から27種類の農耕適地条件を初期農耕適地と称して把握を行い5種類のグループに分類した。初期農耕適地条件は、植生指標の変動傾向から把握したものであり、国土内の対応ポイントにおける干ばつの影響の受けやすさを示しているとも言える。
植生指標と降水量(植生指標の平年値と同期間)の平年値傾向と各初期農耕適地条件との対応関係から、各初期農耕適地条件に対応する国土内のポイントの灌漑農業や天水農業の可能性を探ると共に、農耕適地条件と農耕適地周辺に存在すると考えられる農耕開発可能地のポイントを把握した。その結果をグループごとに纏め、農耕適地と農耕開発可能地の国土内マップと土壌との対応マップを作成した。
農耕適地と農耕開発可能地に対する検証は、ASTERセンサの情報を用いて行った。その結果、地上面の植生と思われる地域と農耕適地や農耕開発可能地は位置的には少しずれているが、形状的には類似しているがわかった。これは、ASTERセンサの座標が衛星の軌道情報から求められていることや、NOAAの情報から作成された全球植生指標画像において精密幾何補正がされていないことなどが原因としてあげることが出来る。面積の概算を行った結果、FAOの報告に対して約5万Ku広い結果となった。本研究の成果は、アフガニスタン国の農耕再生に対して有用性が高いと考えられる。