新垣 博之

グローバルデータセットを用いた同規模河川流域における水資源特性の比較検討

向井幸男 力丸厚 高橋一義

現在60億人を突破したといわれる世界人口は、2025年には80億人に達する
といわれている。世界の水使用量は人口の増加・生活水準の向上を反映して増
加してきており、今後水をどのように確保するかが人類の大きな課題となる。
また現在はあらゆる国で、水資源をめぐる紛争や洪水被害の問題が多数発生し
ているのが現状である。各河川流域においてどの程度の水資源が存在している
のかを把握することがそれらの問題解決の糸口となる。
よって本研究ではグローバルデータセットという全球で同質なデータを用い
ることにより、複数の対象流域でどのような水資源特性があるかを比較し、ど
のような改善点があるかを検討した。対象とした流域はアジア地域(ガンジス、
インダス、長江、メコン)、アフリカ地域(ニジェル、ザンベジ、オレンジ)、
南アメリカ地域(オリノコ)である。
水資源特性を探る要因として、3つの自然条件(水文、植生、河川地形)に着
目した。流域内での水収支の関係・植生量から水資源量を、降雨と植生の季節
変化から水資源保持能力を、河川長・勾配の分布から流出速度などを求め、対
象9河川でどのような水資源特性があるかを検討した。
9つの河川で水資源量を比較した結果として、メコン・オリノコが上位にある
ことが分かった。これらの流域は植生も高い値を示した。しかし水資源量保持
という観点からみるとオリノコの方が優れていることが分かった。メコン流域
は近年も洪水被害が多発していて、防災のための整備が望まれる流域である。
アフリカ地域のザンベジ、ニジェル、オレンジといった流域は降水量が少な
く、水資源量も少ない流域である。しかしザンベジはその中でも高い植生の値
を示し少ない水資源が有効に使われている事を示唆している。しかしどの流域
も水資源を保持する能力が低く、雨季と乾季で植生量が変化する。よって雨季
の水資源を保持できるダム等の施設が望まれる。
ガンジス、長江、インダス流域は同じアジア地域でありながらも水資源量に
もだいぶ差がある。大きく違うのはガンジスでは一年を通じて安定した植生が
得られているのに対し、ガンジス・長江では得られていないことである。これ
がインダス文明の発展した理由なのであろうか。
以上のように同一指標を複数河川に用いることにより、その流域だけでは把
握できない様々な特性が明らかになった。この資料がグローバルな視点から水
利用を考える際の基礎資料となることを期待する。