Mazran bin ZAINONDIN
リングせん断試験装置の改良とその効果の検討

リングせん断試験装置は残留強度を測定するために開発された。残留強度とは土に大変位が起こった後、最大せん断応力より小さくなり、かつ一定の値に落ち着いたせん断強度をいう。この装置は若干の改良により測定精度も向上し、研究はもとより実務でも用いられている。試験装置の基本的な構造は、上下に重ねたリングで環状供試体を外側と内側の両方から拘束し、土に垂直応力を作用させながら、円周方向にせん断力を加えるものである。繰返し一面せん断とは異なり、連続的に大変位を与えることができるため、せん断面の状態を原位置に近い状態で再現できる。また、せん断中に供試体の断面積が変わらないことから地すべりでの残留強度を求めるために使われる。しかしながら、このリングせん断試験装置にはいくつかの問題点が挙げられる。以下にその問題点と改良方法を示す。

リングせん断試験装置では供試体が常に周面リングに拘束されているため、供試体と周面リングとの間に摩擦が生じる。この摩擦が大きいとせん断面に均一な鉛直応力が作用しなくなる。この問題を解決するため、周面リングにテフロンコーティングを施した。この改良により、摩擦の影響を低減することができた。
改良前のリングせん断試験装置では、せん断に伴い周面リングが傾いた。このことにより、せん断面における正確な応力測定が困難になる。また、大きめに周面リングを開ける必要が生じるため、供試体漏出の問題も発生する。周面リング固定の剛性をあげることにより、せん断中の周面リングの傾きを小さくすることができた。

改良前のリングせん断試験装置では鉛直応力測定用ロードセルによって鉛直荷重を測定し、フリクション測定用ロードセルによって摩擦を測定する。これらのロードセルの測定値を引いた値からせん断面上の応力値を計算する。そこで、せん断面上の応力を直接測定できるように、新たに供試体の下部にロードセルを設置した。この比較から、従来のせん断応力測定方法では、ボールベアリングの摩擦により正確なせん断応力が測定できないことがわかった。

最後に、改良した試験装置において、実験の再現性が確認された。