地盤工学研究室 岩井雅博
現場実測データにおける中折れ対応シールド機動力学モデルの検証
1.はじめに

 現在,シールドマシンの制御・操作は自動掘進システムにより行われている.しかし,シールド掘削に関連する地盤物性値やシールドマシンに作用する外力,およびその挙動については未解明な点が多い.これらの問題点を解決するためには,シールドマシンの作用力が力学的釣り合い条件を満たすよう,シールドマシンの挙動・掘進条件を考慮できるシールド機動力学モデルの確立が必要である.本研究では,上総層群上星川層細砂(Ks)における中折れシールド機挙動の,実測値と動力学モデル1)による計算値とを比較することにより本モデルの妥当性を検証することを目的とする.
2.解析方法

 解析手順は以下のとおりである.
@ 現場実測データによる地盤物性値の逆解析
A @で求めた地盤物性値によるシールド機挙動予測
3.解析データ

 解析に用いた実測データは,土被り約12m,N値50以上の上総層群上星川層細砂(Ks)に,マシン外径2.28mの泥水式中折れシールドで掘削された浦舟線配水管トンネルの621〜640Ringの現場計測データである.解析区間は上り勾配0.08‰の直線である.

 現場の地質縦断図を図-1に,解析に使用した入力物性値を表-1に示す.
4.解析結果

 解析結果を図-2〜図-4に,作用力一覧を表-2に示す.図-2,図-3から,シールド機動力学モデルによるシールド機挙動は,実際のシールド機挙動と良く一致していることがわかる.次に,図-4から,シールド機前胴がトンネル線形より上向きとなり,シールド機後胴がトンネル線形より下向きとなって,掘進していることがわかる.これは,上向きの鉛直中折れをしているためである.さらに,これは,表-2に示すシールド機に作用する外力と整合している.
5.まとめ

 シールド機動力学モデルによる中折れシールド機挙動は,実際のシールド機挙動と良い一致を見た.これより,中折れシールド機挙動に対しても,シールド機動力学モデルの合理性が確認された.
参考文献
1)杉本光隆・Aphichat Sramoon:施工実績に基づくシールド機動力学モデルの開発,土木学会論文集 No.673/V-53,2001.