大渕 貴
引張り応力を考慮した不飽和土の強度特性
我が国のように多雨多湿の国では、盛土あるいは舗装版下の路床・路盤など、施工時には不飽和な状態の土も、次第に飽和状態に近づく傾向にある。しかし、飽和度が100%よりわずかに低下する、あるいは土中の間隙に気泡が生じて間隙水圧が負となっている状態まで考えると不飽和土の範囲は拡大され、多くが不飽和土の問題となる。不飽和土の研究は飽和土に比べ遅れており、確固たる理論が確立されていない。そのため、不飽和土の工学的性質を的確に把握し、構成則を確立する研究が不可欠である。
現在、不飽和土における強度特性として破壊規準が提唱されているが、試料の作り方や試験手順などが異なるため、この破壊規準に一般性があるかどうか確認されていない。そこで本研究では、中空ねじりせん断試験機を用いて、三軸試験機では再現できない応力状態でせん断試験を行い、破壊規準の一般性について検討する。
実験では、供試体を不飽和化させてせん断試験を行い、飽和土と比較して偏差応力や体積変化特性などにどのような変化が現れるか調べる。
試験条件はサクションを100kPaでpnetが25〜300kPa、サクションが200kPaでpnetが50〜200kPa、サクションが400kPaでpnetが100kPaのケースを行った。また、飽和土と比較するために、p'=75〜300kPaの飽和土での試験も行った。不飽和土試験、飽和土試験は共に、最大主応力方向を45°、中間主応力係数を0.5でせん断試験を行っている。
不飽和土の試験において、サクションおよび基底応力の変化が偏差応力、体積変化特性に与える影響を、破壊規準をもとに検討を行った。
本研究で得られた知見を以下に示す。

@ qは、基底応力pnetの増加に伴って大きくなり、サクションの増加によっても大きくなる。つまりqの増加は、拘束圧や間隙比の減少、土粒子同士のメニスカスより生じる力が大きく影響している。

A せん断時の体積ひずみの挙動はサクションに大きく影響される。サクションが大きいほど降伏後に膨張しやすくなる。

B 供試体の不飽和化が進むにつれて、剛性が大きくなり、脆性的な性質が現れてくる。

C 高拘束圧領域においては既往の破壊規準を確認することができたが、低拘束圧領域では引張り応力の影響による強度低下を考慮し、新たな破壊規準を求めることができた。