岡田 大道
産業廃棄物を混入した吹付けモルタルの研究


 近年の廃棄物の大量発生によって,廃棄物の最終処分場の残余年数は残りわずかとなっ
ている.よって何らかの方法で産業廃棄物を再利用するということが,緊急の課題である.

 昨年度までに,桜井らにより産業廃棄物である鋳物灰と還元スラグを多量に混入したコ
ンクリート(CASコンクリート)が開発され,それほど高い要求性能を必要としない無筋コ
ンクリート構造物では充分に適用可能であることが確認でき,またその研究を基に,松村
らはCASコンクリートの異形消波ブロックへの適用性を検討している.

 本研究の目的は,産業廃棄物である還元スラグ・鋳物灰をモルタル中に混入し,吹付け
モルタルとして再利用するということである.産業廃棄物を混入することによって吹付け
モルタルの要求性能が満足できるかどうかを検討した.還元スラグ・鋳物灰をそれぞれ
200kg/m3混入するCAS200から,それぞれ600kg/m3混入するCAS600までの供試体を作製し,
28日強度を測定した.

 その結果,作製したすべての供試体は吹付けモルタル目標強度を上回る結果となった.
しかしながら,CAS600は,細骨材の量が非常に少なく,ペースト状であるため,AE減水剤
の効果を得ることが出きるのはCAS500までであると判断した.

 産業廃棄物混入量が比較的大きい,還元スラグ・鋳物灰をそれぞれ400kg/m3もしくは
500kg/m3混入するCAS400・CAS500について,普通モルタルと比較してみることにした.7
日強度から56日強度を水中・気中養生を経て測定したところCAS400・500どちらとも,水
セメント比は大きいが,普通モルタル(水セメント比60%)よりも大きな強度を得た.

 次に,CAS400・CAS500の強度は,普通モルタルの水セメント比に換算して,どれくらい
の強度に等しいかを調べることにした.普通モルタルのW/C=50〜75%の供試体を作製し,
気中養生28日後の圧縮強度試験を測定し,圧縮強度−セメント水比曲線を作成した.その
結果,CAS400・CAS500は実際の水セメント比は80〜90%と非常に大きいが,普通モルタル
の水セメント比50%程度の圧縮強度と等しいことがわかった.

 CAS400・CAS500どちらとも,吹付けモルタルとして適用することは可能であることがわ
かった.しかしながら,実際に吹き付け機械を用いた場合に,目標強度以上の強度が得ら
れるか,今後検討すべきである.