市川道代
コンクリートの表面被覆材料の有効性に関する研究

 コンクリート構造物の補修工法として,コンクリートの表面に表面被覆材を塗装する工法が
用いられるようになっている.この手法は手軽であり,塩化物イオン,水分,酸素や炭酸ガス
のコンクリート中への侵入を抑制する効果がある.特に,海岸付近の高架橋や構造物には,塩
害を防ぐ目的で表面被覆材を使用することが多い.表面被覆材が形成する薄い膜厚で,物質の
遮蔽効果が得られる.しかし,表面被覆材料の剥がれや,ひび割れ,劣化などによりその遮蔽
効果が損なわれることがある.近年,表面被覆材のひび割れ追従性の研究が多くなされている.
ひび割れ追従性とは,コンクリートの基盤にひび割れが生じ,その後ひび割れ幅が大きくなっ
ても,表面被覆材も一緒に伸び,ひび割れを覆う性質のことである.このひび割れ追従性と相
反するのがコンクリートの付着強さである.一般にひび割れ追従性の良いものほどコンクリー
トとの付着強さは弱い.付着強さが弱いと,コンクリートと表面被覆材の間から,水分や塩化
物イオンが浸入する可能性が大きい.

 実際の施工現場で表面処理材を施工する場合には,必ずコンクリートの表面は乾いた状態で
行わなければならない.しかし,コンクリート表面が乾いた状態での施工は,雨や雪などの天
候の関係から,困難な場合があると考えられる.そこで本研究では,表面被覆材の付着強さに
着目し研究を行った.コンクリート表面の状態(乾燥,湿潤)と養生条件が,表面被覆材の付
着強さに及ぼす影響を実験により検証した.また,表面被覆材は,含浸系のものとエポキシ樹
脂系の2種類を用いた.実験データから以下の知見が得られた.
・含浸系の表面被覆材料ではコンクリート表面が気乾状態よりも湿潤状態の方が付着強度は大
きい.
・エポキシ樹脂系のようなコンクリート表面に塗膜を形成するタイプの表面被覆材料の付着強
度を調べる場合には,試験機と表面処理材を接着する接着剤の相性を考える必要がある.
・水中,高温高湿などの養生条件下でも,付着強度は標準的な養生条件(20℃,RH60%)の場
合とほとんど変わらない.