久保晶彦
ポリ塩化ビニル製骨材のコンクリートへの利用に関する研究
ポリ塩化ビニル(以下,塩ビ)は,石油製品から取れるエチレンと塩素から成る材料で
あり,多種多様な用途に用いられている五大汎用樹脂の1つである.その生産量は年間200
万t,廃棄物量は100万tにも及び,今後も廃棄物量は増加するものと考えられる.しか
し,これまで塩ビは焼却処分を行ってきたが,ダイオキシン問題が表面化したために有効
的処分方法が確立されておらず,処分方法が懸念されている.そこで,本研究では塩ビが
軽量且つ高強度であることに注目し,塩ビの廃材の一処分方法として,塩ビをコンクリー
トの軽量粗骨材としてリサイクルすることを目的とした.本論文では,廃材を粉砕した状
態の塩ビ製骨材を用いたコンクリートの施工性・強度特性が著しく劣るため,それら諸性
状の改善を目的に作製した被覆型塩ビ製骨材の被覆効果について,並びに,塩ビ製骨材を
軽量粗骨材として使用することに対して,問題点及び利点に関して検討し,その結果をま
とめたものである.
第一章では,本研究の背景及び目的を示し,本研究に関連する既往の研究,本研究の主
要材料であるポリ塩化ビニルの概要,及びポリ塩化ビニル製骨材と人工軽量骨材との違い
について論じた.その他,本論文の構成について述べた
第二章では,塩ビ製骨材を使用してコンクリートを作製し,天然骨材に比較して施工性・
強度特性などにおいて著しく天然骨材に比べて劣ることを確認した.
第三章では,ポリ塩化ビニルの廃材をセメント組織で被覆を施した被覆型塩ビ製骨材を
提案し,被覆型塩ビ製骨材の被覆効果について検討した.実験の結果,被覆を行うことで,
強度特性・フレッシュ性状は向上したことが確認された.
第四章では,各塩ビ製骨材を用いて,軽量コンクリートを作製し,天然骨材と強度と質
量の関係,強度特性,変形特性など各種性能について多角的に比較した.また,塩ビ製骨
材を用いて自己充填コンクリートが可能なのかフレッシュ性状・強度特性を評価した.そ
の結果,塩ビ製骨材を用いたコンクリートは高強度領域になるに従って,強度が停滞し,
天然骨材の強度を大きく下回る結果となった.そこで,塩ビ製骨材の強度が高強度になる
に従って収束する原因について検討を行い,強度発現のメカニズムについて確認を行った.

 第五章では,本研究の結論及び今後の課題について提案した.