山田 文則
波動場における飛来塩分の発生に関する数値計算モデル

海水から発生する飛沫・飛来塩分は、沿岸域の住民の生活に影響を与えるばかりでなく、コンクリート構造物の耐久性を悪化させる主要因であり、その動態を把握することが強く望まれている。飛来塩分の実体は、未だ未解明の部分が多く、たとえば、飛沫(水滴)に解けこんでいる成分やエアロゾルとして沿岸から数キロ程度飛来するものもある。本研究では、波のエネルギーが砕波によって気泡の発生に寄与し、その結果、飛来塩分が発生するというモデルを構築し、数値実験を実施した。また、発生した飛来塩分は、風に乗って拡散する計算もあわせて行い、陸域の輸送も計算した。

砕波から発生する飛来塩分には、大きく2つに大別することができる。@砕波によって海水面がちぎれることによって発生する飛沫、A砕波によって生成される気泡から発生する飛沫である。本研究では、内陸部の塩害に非常に強く関係する粋表面の気泡(A)によって発生する飛沫について計算を行った。以下にその内容について説明する。飛来塩分の発生要因となる海水面下の気泡は、砕波によって海水面が乱れることで生成される。この気泡は、海水表面で破裂すると同時に飛沫を発生させる。そのため、本計算モデルでは、海水面の乱れの度合いをエネルギー減衰量とし、海水面下に生成される気泡量および気泡から発生する飛沫量を計算することによって、飛来塩分の発生量の計算を行った。

本研究では、従来あまり検討されてこなかった砕波からの飛沫の発生に関する数値計算モデルの開発および検討を行った。その結果、本計算モデルは、砕波から発生する飛沫を十分に計算できることが明らかになった。また、本研究により、飛来塩分の発生から輸送までを表した計算モデルが開発された。その結果、潜堤を用いることで飛来塩分の内陸部への輸送量を軽減できることが明らかになった。