田村曜
地中音による中越地方の長期天気予測に関する研究

 現在、天気予測は気象衛星や過去の気象データ等から行われている。この方法では莫大な費用とデータが必要な割に、長期の天気予測は不確かなものである。そこで本研究は、地中から樹木に伝わる音(振動)から長期の天気予測を行うものである。本研究に至った経緯としてカマキリの卵のうからの積雪予測がある。

 カマキリは産卵地やその年々によって違った高さに卵のうを産み付ける。卵のうは必ず積雪よりも上にあることが分かっている。これらの事から、カマキリは積雪量を予測しているのではないかと考えられた。次に、カマキリは何を感知して予測を行っているのかを調べていると、産卵する高さにおいて地中音が最大になることが分かった。よって、カマキリは地中音により積雪を予測していると考えられた。積雪は気温により左右されるものであるから、地中音と気温の間には何らかの関係があると考え本研究を行うに至った。

 本研究では、地中音が3ヶ月後の気温を表しているのではないか(3ヶ月予測)という考えに対して実際に気温と比較を行い、その信頼性を調べた。データとして、地中音は4月から6ヶ月分、気温は4月から10ヶ月分の長岡のデータを用いた。

 まず、6ヶ月分の地中音が何日後の気温と類似しているのかを残差平方和を用いて調べた。ここで地中音と気温が正と正、負と負なら一致していると考え、何日一致しているのか確率を出した。その結果、最高でも約60%の確率でしか一致していなかった。

 そこで、地中音を30日毎に区切って何日後の気温と一致しているかを求め、その頻度を調べた。結果より、地中音は約3ヶ月後の気温と類似している傾向にあることが分かった。

 次に、6ヶ月分の地中音を気温データ上で3ヶ月ずらし、データの正負の一致を調べた。結果は、一致確率が約55%と類似しているとは言えないものであった。この時、6ヶ月の内、後半の3ヶ月は一致しているように見え、前半の3ヶ月は一致していないようであった。

 そこで、前半の3ヶ月を正負逆にして比較を行った場合、一致確率が上がるのではないかという仮説を立てた。検証の結果、データの正負の一致確率は約67%まで上がった。また、χ2値を求めたところ、この仮説は75%の確率で信頼できるものであることが分かった。よって、この仮説は棄却できなかった。

 結論として、地中音は4月から3ヶ月間を正負逆に、7月から3ヶ月間はそのままで気温の変化を表していると言える。

 今後の課題として、予測の精度の向上、他の地域における検討、新たな比較方法の検討が挙げられる。