CCDカメラ斜面監視システムによる
地すべり動態観測に関する研究
建設設計研究室  西村 友宏
指導教官  鳥居 邦夫
指導教官  宮木 康幸


地すべり危険区域の監視,予測を行う事は,その近隣の安全管理上非常に重要である.地すべりが発生する可能性の高い斜面に対して,現状では,標柱・伸縮計・傾斜計等を用いて表面移動量を測定し監視する方法が主流である.しかし,これらの方法は,点レベルの監視であり,地すべり予知を行うにはデータが不足している.これに対し,CCDカメラを用いた斜面監視システムは,点レベルから面レベルに広がり,データを増加させることが可能である.

 昨年度までの研究成果として,地すべりの前兆現象から崩壊に至るまでの過程を捉えることに成功し,本システムを用いた地すべり予測が可能であることが確認された.しかし,この地すべりは,数日間程度で数メートルの変動が発生するタイプのもので地すべり予測としては短期的なものであった.
そこで,本研究では,毎年数十センチから数メートルの緩慢な地すべりが発生している広範囲の地すべり地帯の一区画を観測対象斜面とし,6ヶ月にわたる連続観測を行い,本システムによる長期地すべり動態観測の適用性について検討するとともに,緩慢な動きの長期地すべり予測について検討することを目的とする.
観測対象斜面は沖見地すべり地帯(新潟県東頚城郡牧村大字神谷地先)とし,2000年11月30日から2001年10月15日にかけて観測を行った.観測対象斜面が広大であるため,複数のカメラを用いて制御できるようなシステムに変更し,モノクロCCDカメラ2台を用いて異なった一区画の2次元計測を行った.

 観測の結果,本システムにおいて6ヶ月にわたる緩慢な動きでの地すべり動態観測を行い,1日の信頼性が高いデータを抽出し適用することで,地すべり変動を捉えることが可能であることを確認した.また,長期地すべり予測においては,成長曲線を適用することで緩慢な動きでの長期地すべり予測が可能であることを確認した.以上の研究成果より,本システムの適用性を検証できたということになる.
今後の課題として,携帯電話による通信システムの改良,ターゲットレスによる画像処理を用いた斜面監視システムの開発,表面現象と地下現象との相関関係を把握することで信頼性の高い地すべり予測システムの構築ができるのではないかと考えられる.