石川幹夫
建物による回折・反射を考慮した道路交通騒音の簡易推定に関する研究

 道路交通騒音は変動騒音であり、騒音の評価を行うためには、対象となる道路周辺地点での音圧レベルの時間変動を把握しなくてはならず、従来の方法では道路周辺に多くの受音点を設置し同時に測定を行う必要があり、費用や手間が多くかかるものであった。

 騒音の評価方法として時間率騒音レベルが採用されていたが、平成11年4月の環境基準改正により、等価騒音レベルを採用することになった。この評価方法では、各時刻におけるOAの値よりも、全体としてどの程度の値となるかが評価の対象となる。

 騒音予測を行うために必要な要素は、受音点の位置(周囲の情報)、交通流作成のための情報(車種、車頭時間、走行速度)、音源のパワーレベルではないかと考えられる。車種、車頭時間、走行速度の情報は、現在の幹線道路に数多く設置されている車両感知器のデータから自動的に取得することが可能である。これらの情報を用いて等価騒音レベルを求めることができれば、簡易化を図ることができる。昨年までの騒音モデルでは、道路周辺の情報を考慮せず、道路の周辺に建物がない場合のみ予測可能であった。しかし、実際の道路においては、建物が多く存在している。そこで、本研究では道路周辺の情報を加え、建物が存在する場合の道路交通騒音を予測するモデルを開発する。これを目的とする。

 建物による回折・反射がモデル内で再現されていることを確認するために、一台の車を一定の速度で走行させた場合の騒音を測定し、予測したものと比較した。その結果、よく似たOAの時間変動を示していることから伝播を再現できていると確認できた。次に、幹線道路で騒音を測定した。その交通状況をビデオで録画し、各車の車種、車頭時間、速度の情報を取得した。その値を用いて予測した値が実測値に近いことから、建物が存在する場合においても予測できるといえる。しかし、同じ車種、速度であっても車によりパワーレベルが異なる。そこで、モンテカルロシミュレーションを用いることで音源のパワーレベルを変動させて予測した値と変動させない場合を比較したところ、よく似た値となった。よって、本モデルにおいては30分以上で測定する場合はパワーレベルを変動させなくてもよいということがいえる。また、より少ない情報(大型車混入率、台数、平均速度)においても予測できることが確認できた。そのため、車両感知器から離れた場所での予測が可能であるといえる。

 今後の課題として、建物が道路の両側にある場合の騒音予測モデルを作成する必要がある。