田村公伯
合成斜張橋のクリープ・乾燥収縮、耐荷力性状に関する研究

 近年,コンクリート床版と鋼I桁を合成させた断面を主桁に持つ合成斜張橋が経済的であるとされ海外で注目を浴び,建設数も増加する傾向にある.しかし我が国では技術的問題点が未解決であるとされ,建設されるには至っていない.主な問題点として,クリープ・乾燥収縮,耐荷力性状および耐久性状が明確でない,また鋼箱桁に比べて耐風安定性に劣る,などが挙げられている.本研究は,それらの問題点の中でクリープ・乾燥収縮および耐荷力性状に着目し,これらを明らかにすることが目的である.

 まず,床版コンクリートのクリープ・乾燥収縮により床版コンクリートおよび鋼桁の応力がどの程度変化するのかを明らかにする.この際,架設ステップを考慮したもの,および完成状態からクリープ・乾燥収縮を考慮したものの両者から得られた結果を比較することとする.次にクリープ・乾燥収縮が耐荷力に与える影響について検討する.ここでも載荷方法の差異による影響を考慮する.最後に,桁高さを変化させ,終局強度および挙動に与える影響について検討を加える.そこでは,架設をフォローしクリープ・乾燥収縮を考慮して試設計を行った断面にて解析を行う.

 本研究で得られた主な結果を以下に示す.

 クリープ・乾燥収縮による応力移行は,スパン150mモデルでは塔位置において,コンクリートで2.3MPa,鋼桁で60MPaである.スパン400mモデルでは,コンクリートが2.2MPa,鋼桁が57MPaである.スパン150mおよび400mに拘らず,耐荷力は塔位置の鋼桁下縁応力により支配される.そのため,クリープ・乾燥収縮による鋼桁の圧縮応力増加により,耐荷力は低減される.また,載荷方法による耐荷力の差異はほとんどない.終局挙動は,塔位置の桁が全断面にわたり降伏し,終局に至るというものである.構造的に塔位置の桁が弱点となるが,桁高さを高くした場合,必ずしも荷重倍率が大きくなるとは限らない.