加賀谷悦子
耐候性橋梁の状態調査と分析に関する研究

耐候性鋼材とは鋼材に微量のCu、Cr、Ni、Mo、Pなどを添加することにより、安定錆層と呼ばれる緻密な錆層が形成され、その錆層が水や酸素の透過を防ぎ、その後の鋼材の腐食作用を抑制する働きをもつ鋼材であり、無塗装での使用が可能である。耐候性鋼材の錆安定化には飛来塩分量が最も関係しており、新潟県では離岸距離20km以上であれば飛来塩分量の測定を省略して使用できるが、20km以内では飛来塩分量を測定し、それが0.05mdd以下でなければ耐候性鋼材を無塗装で使用してはならない。しかし、その測定には1年以上有するため、実際は飛来塩分量を測定せず、近隣の耐候性鋼橋梁のパフォーマンスから使用の適否を判断する場合が多い。また、最近は公共事業のコスト縮減が大きな命題となっており、塗装の塗り替えを必要としない耐候性鋼材を選択する機会が多くなりつつある。

したがって耐候性鋼橋梁の実態を知り、錆の状態や地形環境との相関を調査することや適用上の問題点を明確にすることは今後の耐候性鋼橋梁建設の際に極めて有益であるといえる。

 本研究では、現地調査を行って錆状態や地形環境を調査し、そのデータを地図情報として提供することで離岸距離20km以内での耐候性鋼材の使用適否の判断材料となることを目的としている。また、3者共研による耐候性鋼裸仕様の錆の安定化を評価する5段階の錆評価レベルと離岸距離、建設年数、北西の季節風と橋軸方向の角度差、地形環境、標高、北西方向の山の標高とそれまでの距離のとの相関を分析した。一方、新潟県内には錆安定化に20年を有する安定処理使用橋梁が多いことから、本来は判断できないこれらを独自に3段階評価を設けて裸仕様と同様な分析を行った。

 離岸距離20km以内の耐候性鋼橋梁の現地調査により、うろこ錆が発生している橋梁はわずか3橋であり、パフォーマンスが全体的に良好な橋梁が多いことが確認された。しかし、局所的にはうろこ錆や剥離錆が発生している場合が多くあり、それらは構造的要因によるものが多かったため、構造ディテールに注意することが大切であることが確認できた。

 分析の結果、20km以内の平地に建設されている場合が最も安定化に進みにくいことがわかった。また、離岸距離20km以上であれば安定化には問題がないことが確認され、さらに山間など山のある地形では20kmを緩和できる可能性が伺える結果となり、地図情報と併せて、今後の耐候性鋼橋梁計画に有効な情報を提供することができた。