村田隆彦
厳密解に基づく舗装構造解析・設計方法の開発と応用
わが国の道路舗装設計は,多くの経験とバックデータに裏付け
られた経験を主とした設計法(TA法)が採用されている.しかし,この設計法は過去に
例の無い舗装構成や,新しい材料を使用した舗装の設計には極めて無力であると
言わざるを得ない.
その解決手段として利用され始めている設計法が,
多層弾性理論を用いた理論的設計法である.

多層弾性理論は,円形等分布荷重下の半無
限多層地盤の応力,ひずみ及び変位を境界条件に基づいて積分方程式を解くこと
によって求める理論である.これらの数値解を導くにはコンピュータの支援が
必須であるが,これらのプログラムは使い勝手(usability),現場における実行可
能性(feasibility)が全く考慮されておらず,一部の研究者のみが使えるもので
あった.このことが理論的設計法の導入を遅らせてきた原因の一つとも考えられ
ている.

そこで,本研究においてこれらのような現状を改善すべく,実務レベルで容易に
使用できる解析・設計システムの開発を行なった.
開発したプログラムは,解析の入力ファイルを視覚的に作成するプリプロセス,
および解析を行なうメインプロセス及び解析データを視覚的に捉えるためのポストプロ
セスの3つで構成されたシステムから成っている.なお,解析のアルゴリズムや
適用条件などはメインフレーム用に開発されたBISARのものを参考にした.
これにより,実務上現在まで使い物にならなかったプログラムが,舗装設計技術
に対し,非常に役に立つものとなった.

また,BISARには現在まで全く修正されていないプログラム上の欠陥が存在
していた.それはせん断力を載荷させた際に表面の応力,ひずみにエラー値が出るという
ものである.本研究においては,理論の一部が間違っていた事を指摘し,
それを修正した.

さらに,本研究で開発した設計システムを用い,舗装構造に限界状態を考慮した
設計法について検討を行なった.その結果,アスファルトコンクリート層が薄い
構造(路盤厚と比較して層厚が通常よりも薄い)は,応力分散が期待できない為,
路盤層にクリティカルなポ
イントが発生するという現象が生じて,現行の破壊基準の適用は困難である事が
わかった.

また,層間滑りの有無を考慮した場合に,アスファルトコンクリート層に相当す
る層には60%前後の寿命の違いがみられた.つまり,層間に滑りがあると
,設計寿命は著しく減少するということである.
これらの検討より,層間滑りを考慮する事の重要性が明らかにな
った.